飯島国際商標特許事務所
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【知財高裁判決紹介】不使用取消審判の「使用」の解釈

2017-06-21

知財高裁平成27年11月26日判決(平成26年(行ケ)10234号)は,概ね次のとおりの判断し,特許庁が取消2014-300062号事件について平成26年9月24日にした審決(使用の事実あり)に誤りはないとしました。

1 商標法50条の趣旨と「使用」の解釈
「商標法50条の主な趣旨は,登録された商標には,その使用の有無にかかわらず,排他独占的な権利が発生することから,長期間にわたり全く使用されていない登録商標を存続させることは,当該商標に係る権利者以外の者の商標選択の余地を狭め,国民一般の利益を不当に侵害するという弊害を招くおそれがあるので,一定期間使用されていない登録商標の商標登録を取り消すことについて審判を請求することができるというものである。」
「上記趣旨に鑑みれば,商標法50条所定の『使用』は,当該商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用されていれば足り,出所表示機能を果たす態様に限定されるものではないというべきである。」

2 結論
「被告は,本件行為,すなわち,平成23年10月12日,メタルハライドランプ水中灯『アイライト』である形式『M2000BW/V』を,本件ラベルが貼付された本件個装箱に入れて売却,納品したものと認められ,これは,商標法2条3項2号所定の『商品の包装に標章を付したものを譲渡』に該当するから,商標法50条所定の使用の事実が認められる。」

3 ワンポイント解説
不使用取消審判が請求された場合、商標権者は、登録商標の使用の事実を立証しない限り、その登録の取消しを免れないとされています(商標法50条2項)。
商標法50条の「使用」の解釈について、形式的に商標法2条3項の使用に該当するのみならず、それが商標的使用態様(出所表示機能を果たす態様)で使用されていることが必要であると考える見解と、商標権侵害の場面と異なり商標権者が登録を維持する場面の問題であるなどを理由に、形式的に商標法2条3項の使用に該当する行為が行われていれば足りると考える見解に分かれています。
本判決は、商標法50条の趣旨及び使用の解釈を示しており、後者の見解に立つものと思われます。
もっとも、本件の具体的な事案においては、商標的使用態様で商品の包装に登録商標が付されていましたので、どちらの見解に立つ場合でも結論は同じであったといえます。
少なくとも「その指定商品又は指定役務について」使用されていることは必要であることは、本判決でも言及されていますので、商標法上の「商品」及び「役務」について具体的に使用されていることは必要であり(そのような場合、多くの場合出所識別標識としての機能を発揮しています)、無償で配布される販促物などについては、その配布目的から「その指定商品又は指定役務について」使用されていないと判断される可能性があるといえます。
なお、東京高裁平成13年2月27日判決(平成12年(行ケ)335号)は、「商標は、主たる機能として商品、役務の出所を表示し、自他商品、役務を識別させる機能を有しており、商品、役務の品質を需要者、取引者のために保証する機能及び宣伝広告機能を有する。ここにいう商品、役務とは、必ずしも有償である必要はないが、一般に、販促品に付された企業名は、専らその販促品とは別の当該企業が扱う商品、役務の宣伝広告のために付されるものであって、販促品を登録商標の指定商品とする限りについてみれば、これに接する取引者、需要者に対して、商標が一般に有する自他商品(役務)識別機能を有するものではなく、もとより、販促品の品質を保証し、その宣伝広告をするために付されるものではない。」として、販促品であるプラチナボールペン(ボールポイントペン)及び書類ホルダー(クリップ)等への登録商標を使用を付した行為につき、商標法50条の「使用」に該当しない旨判断しています。

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