飯島国際商標特許事務所
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新規性喪失の例外適用(デザイン法36条)を受けて意匠登録された意匠権と公知意匠の抗弁(韓国:大法院判決)

2023-09-13

韓国t来法院判決(新規性喪失の例外適用が求められた意匠権と公知意匠の抗弁)

韓国で、新規性創出の例外適用が認めら意匠権に対し公知意匠の抗弁の提出が否定された判決が出た。
今回はその考え方についてみてみることにしたいと思います。

公知意匠の抗弁とは、意匠登録がなされた意匠登録出願前に実施されていた意匠と同一又は類似する意匠
を実施していた場合には、登録意匠の権利範囲に属することはなく意匠権の効力は及ばないする法理をい
うものであり、意匠法にかかる抗弁を認める規定は存しないが、我が国意匠権侵害訴訟でも認められと思
われる事案がある(東京地方裁判所 平成5年(ワ)第17437号)。

この法理は、出願前に実施をしている場合には登録意匠は新規性欠如の瑕疵があり無効審判の請求を認め
られるが、無効審判を請求するまでもなく権利行使が及ばないとすることで、一回的解決手法に優れた見
解ということが出来るが、平成13年改正で無効の抗弁(準特104条の3)が認めれられてからはその主張
の意義が減少してしまったように感じる。

ただし、公知意匠が新規性喪失の例外(意匠法4条2項)の適用を受けて登録になった場合は、新規性欠如
の瑕疵はなく無効の抗弁(準特104条の3)の抗弁の提出は規定上できない。

この場合、当該規定の適用を受けて意匠登録を受けた意匠権者が、その意匠登録出願前に公知になっている
ことから、問題がないとして実施を行った第三者の実施行為に対して意匠権の侵害を問うことが出来るか(
当該第三者の実施意匠は意匠登録権者の実施意匠であり、知得のルートも共通であることから先使用権(29
条)の適用も認められない場合、十分に検討に値する価値がある。

このような事例につき韓国では2023年2月23日判決言い渡しが出た事件(大法院2021フ10473事件)が
あり今後の日本の実務の考え方にも影響が生じる可能性がある。

⑴ 原審の判断
仮に新規性喪失の例外適用を認め、意匠登録を認められた意匠であっても、既に公知となった意匠は、公共
の領域に置かれたデザインであり、被告はそれを信頼した以上、被告の自由意匠の抗弁の提出を制限するこ
とは、公平性を欠くとして意匠権侵害を否定した。

⑵ 大法院の判断
これに対し大法院では、第三者の保護の観点からみても、デザイン保護法が定める時期的・手続き的要件を遵
守して新規性喪失の例外規定を受けて登録された以上、立法者の決断による第三者との利益均衡は成立したと
いうことができる。
また、新規性喪失の例外規定の適用根拠になった公知デザインに基づく自由実施デザイン主張を認めることは、
デザイン保護法がデザイン権者と第三者との間の公平を図るために先使用による通常実施権等の制度を設けて
いるにもかかわらず、公知デザインに対し特段の創作的寄与をしなかった第三者に法定通常実施権を超える無
償の実施権限を付与することにより、第三者に対する保護を、法で定められた登録デザイン権者の権利より優
先する結果になるという点でも、上記のような自由実施デザイン主張は認められることができないとし、意匠
権侵害を肯定した。

⑶ まとめ
仮に、このような場合、当該抗弁の提出を認めた場合には、自己が創作をした意匠を実施して初めて認められ
る先使用権を超え、何ら創作に関与し得ない実施者に対しても無償の実施権原を認めることになり衡平を欠く
ことになるという点から上記のような判断を行ったものと思われる。

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