飯島国際商標特許事務所
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商標法:コンセント(ワーキング32回)

2023-10-26

新設4条4項の内容

4 第一項第十一号に該当する商標であつても、その商標登録出願人が、商標登録を受けることについて同号の他人の承諾を得ており、かつ、当該商標の使用をする商品又は役務と同号の他人の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務との間で混同を生ずるおそれがないものについては、同号の規定は、適用しない。

第32回商標ワーキンググループで4条4項のコンセント制度について以下の点(第31回で問題提起された事項)について検討がなされました。今後、更なる検討がなされる予定です。

1 他人の承諾の「他人」とは
 他人とは商標権者のみを指すのか?前回31回のワーキングで問題の提起がされました。
【庁見解:32回ワーキング】
 承諾は査定時に必要であることから、引用商標権者の承諾のみでいい。

2 実際の使用がなされていない場合でも、4条4項の適用が認められない場合とは
引用商標権と同一又は類似関係であることから、出願商標には4条1項11号が拒絶される。仮に商標権者から同意があった場合でも、具体的に使用を行っていない場合で、出所混同が生じ得るとされる場合はどのような場合を指すのか?
⑴ 引用商標権と同一の場合
 商標同一・指定商品等同一の場合は出所混同を生ずるとして同意があっても、登録を認め るべきではないか?
① 諸外国の対応
幾つかの国でコンセント制度を有する国がありますが、同一の商標についてもコンセントを認める国とそうではない国に分かれる。
通常同一の商標については将来的に出所混同が生ずる可能性が高いからです。
② 日本のコンセントはどうあるべきか(酷似する商標、同一の商標は混同が生ずのか?)
◆ 酷似する商標
4条4項においては、混同を生ずるおそれの有無を審査することからすると、同一・酷似した商標が同一の商品等に使用された場合には 、当事者間でいかなる合意をしとしても混同を生ずるおそれが極めて高いと考えれば、これら商標を4条4項の適用から除外することが考えられる。

【見解】
「酷似」は商標法にも審査基準にもない概念であり、新たに追加すれば混乱を生じる可能性があるから、混同のおそれで読めば足りる。

 ◆ 同一の商標
同一の商標は画一的の混同が生ずる商標として、4条4項の適用除外とすると、商標・商品の同一性は、厳格にすべきと考える。具体的な取引実情を見て、棲み分けができて いるなら登録を認めるという制度趣旨からすると、入口要件で門前払いするのはよろしくないと考える。

【庁見解】
 同一商標・同一商品の場合は類似の程度が高いので混同のおそれが肯定されるほうに働くとか、書き方としてはそのような方がよろしいのではないか。

3 混同を生ずるおそれの考慮要素とは何か?
混同のおそれは、査定時はもちろん将来(何年か先かまでは32回ワーキングでは議論されていない)においても生じないか判断すべきであるが、その際の考慮事情は何か?将来にわたって使用状況を変更しない旨の合意まで必要なのか?

【批判】
◆ コンセントを出す場合には、将来的なことまで踏まえてコンセントを提出する。
◆ 将来の事業活動を縛るため、企業としては困難ではないか。
【庁見解】
 以下の3つの要素を総合考慮して判断をする。出願人もこの点を取捨選択して個別案件ごとに意見を述べることができる。
◆「当事者間で将来にわたって変更しないことが合意された使用態様」

◆「 将来にわたる混同防止・解消のための合意された競業避止等 」
◆「 合意以外にも 、 使用態様について将来にわたって変動する可能性がない、もしくは低いといえるようなファクトに基づいた特段の事情 」
【ファクトの要素】

◆ 長年特定の商品のみに商標を使用してきたような事情
◆ 当事者の業務の性質からして、全く領域の異なる事業に進出する可能性がないというような事情

4 提出する書面等
提出資料は閲覧の対象となるため、合意書等あまり記載したくないことまで提出させると、合意書に署名してもらえなくなるおそれもある。どの程度の記載が必要か?
【庁見解】
将来にわたって変動しないといえる事情が存在することを確認、又は推認できるのであれば足りる。当事者が実際に合意した内容を要約した合意書でも足りると考える。

5 事務局案は両商標について使用状況の相互確認を求めているが、例えば部分的にしか使用していないことなどが明らかになるなど、引用商標権者にとって酷になる場合がある。このような不利益が引用商標権者にあるので、手続を緩和できないか。
【庁見解】
◆ 指定商品等の一部にしか使用していないことを含めた現在の使用態様については、職権調査により特許庁においてもある程度把握することは可能であり、今後ともそのような審査実務を継続していく。
◆ また、将来的な事項等は庁が把握できないので、積極的に提出をして欲しい。

https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/shohyo_wg/32-shiryou.html

産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会第32回商標審査基準ワーキンググループ配付資料 

 

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