飯島国際商標特許事務所
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令和5年不正競争防止法の一部改正の概要

2024-02-28

【令和5年不正競争防止法等の一部を改正する法律の概要」

 令和5年の不正競争の一部を改正する法律の施行が迫っています。商標や意匠の改正の他、不正競争防止法に関する部分が変わります。以下に記載致します。

1 商標
 ⑴ コンセント
 他人の商標と同一・類似をする商標がある場合、先行する者の承諾があっても混同のおそれがない場合には登録が認められるようになります。また並存登録した商標については不正の目的がない場合には不正競争にはならないとされます(不正競争防止法19条1項3号)。
【施行日等】
コンセント制度に係る改正商標法の規定は、令和6年4月1日から施行され、コンセント制度は、施行日以後にした出願について適用されます。優先権の基礎となる第一国出願が施行日前にしたものであったとしても、施行日以後、パリ条約第4条に定める優先期間内であれば、パリ条約等による優先権を主張してコンセント制度の適用を受けることが可能です。詳細は以下のリンクをご参照下さい。https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/consent/consent_qa.html#01-1
⑵ 他人の氏名を含む商標の登録要件の緩和
他人の氏名を含む商標を出願した場合でも、周知な者の承諾及び政令要件を満たした場合には登録ができるように登録要件(商標法4条1項8号の要件)が緩和されます。 
【施行日等】
令和6年4月1日から施行され、施行日以後にした出願について適用されます。なお、優先権の基礎となる第一国出願が施行日前にしたものであったとしても、施行日以後、パリ条約第4条に定める優先期間内であれば、パリ条約等による優先権を主張して改正法の適用を受けることが可能です。施行日関係については特許庁のホームページのQ&Aに詳細に記載されていますのでご確認下さい。 https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/seidogaiyo/shimei.html


2 意匠(新規性喪失の例外の手続きの緩和)
意匠の新規性喪失の例外適用を受けるにあたって、最先に公開した意匠の証明書を提出すれば、その日以後の同一・類似意匠の公開についての証明は不要になります(意匠法4条3項)。
2024年1月1日に施行がされています。詳細な点は特許庁の以下のリンクをご参照ください。https://www.jpo.go.jp/system/design/shutugan/tetuzuki/ishou-reigai-tetsuduki/document/index/ishou-reigai-qa24.p


3 不正競争防止法(不正競争防止法2条1項3号)
メタバース等のデジタル空間における取引が活発化するなど、事業のデジタル化が進む中で、不競法2条1項3号に対しては、フィジカル/デジタルを交錯する模倣事例に対応できないのではないかといった課題が指摘されていました。すなわしち、商品等の形態に関しては有体物を意味する、無体物までも含めるかについて議論があるところですが、今改正では無体物まで含むと解し、形態模倣した商品を電気通信回線を通じて提供する行為を不正競争として規定されました。なお、「模倣」に関しては特段改正がなされずどのようなものを指すのかについては逐条解説に記載される予定です。なお、前述しました「商品」についての定義も同様に逐条解説に記載されることになっていますので、新たな逐条解説の記載が待たれるところです(最新の逐条解説は令和元年7月1日施行版となっております)。
施行は令和6年4月1日となります。

4 不正競争防止法(限定提供データに関する拡張)
不正競争防止法では従来から営業秘密に加えて、限定提供データを保護対象としてきました。但し従来までだと秘密管理性を有するが、公知になってしまったもの(例えば、X会社が秘密に管理しているものを、クライアントAに対し守秘義務を課してライセンスをしたが、その後Aが公知にしてしまった場合)営業秘密の要件も、限定提供データの要件も欠くことになり保護の対象とはなりませんでした。公知になってしまったことから、営業秘密の要件たる非公知性を欠く(不正競争防止法2条6項)、また秘密管理性を欠くことから限定提供データの保護要件を欠く(不正競争防止法2条7項)からです。
そこで、今改正では、そのようなデータも保護できるように改正がなされました。
施行は令和6年4月1日となります。

5 技術上の秘密の使用等に関する推定規定の拡充(不正競争防止法5条の2)
不正競争防止法における営業秘密(技術上の情報に限る)は、その営業秘密を①取得、②使用、③開示の行為が不正競争となります。このうち技術上の秘密営業秘密の使用行為の立証責任は、当該営業秘密の被侵害者の側にあるのが原則であり立証が困難です。そのため、一定要件を具備した場合には、その技術上の秘密を使用して生産などしたと推定する規定を設けています。
ただ、この推定規定は営業秘密の不正競争(2条1項4号~9号)のうち、2条1項4号(不法取得類型)、5号・8号(取得時悪意重過失の転得類型)に限られていました。そこで、(権限のある者に関する)正当取得類型(同項7号)、 取得時善意無重過失の転得類型(同項6号・9号)の場合にも適用を広げるように改正がなされました。
施行は令6年4月1日となります。

6 損害賠償の立証軽減の拡大(不正競争防止法5条)損害賠償の立証軽減規定が、産業財産権と同様の規定ぶりとなります。
⑴ 5条1項の改正
改正前の5条1項では、①既に産業財産権法では既に整備がされている権利者の生産能力・販売能力を超える損害の認定ができない、②侵害者が「物を譲渡」した場合には適用できるものの、侵害者が「役務を提供」する場合に適用できない、③営業秘密侵害について、営業秘密のうち「技術上の秘密」が侵害された場合にしか適用できないという問題点がありました。
令和5年改正により、①権利者の生産能力・販売能力を超える損害の認定ができるようになる。②侵害者が物を譲渡した場合だけではなく、「役務を提供した場合」にも適用できるようになります。更に、③営業秘密に関する不正競争については本項の適用を受けることができるのは、「技術上の秘密」に限定されていましたが、営業秘密全般にその範囲が広がりました。

⑵ 5条3項の改正
特許法等の産業財産権法では、特許権侵害を前提とした侵害時ライセンス料を請求できる旨(特許法102条4項)の規定がありますが、従来の不正競争防止法のライセンス料相当額の損害賠償請求(不正競争防止法5条3項)を行う際にその旨の規定がありませんでした。そのため、令和5年改正では、不正競争があったことを前提として 交渉した場合に決まるであろう額を考慮できる旨の規定を追加(不正競争防止法5条4項)しました。
これらの規定の適用は令和6年4月1日です。

7 国際裁判管轄規定の創設
日本法の適用範囲の明確化営業秘密は情報財であり、海外に持ちだすことが可能です。
この際、民事(刑事では既に日本の裁判管轄に付す旨の規定がある(不正競争21条5項))においては、その解釈(民訴等の規定による(結果発生地の解釈))が分かれ、日本の裁判所に訴えが提起できるか否か不明確となっていました。
そこで、不正競争防止19条の2,19条の3を設け、①日本国内において事業を行う営業秘密保有者の営業秘密であって、②日本国内において権利されている場合には、日本の裁判所に訴えを提起することができるよう改正がなされました。
なお、当該管轄が認められる営業秘密は ①不正取得類型(4号)・②正当取得類型(7号)・③取得時悪意重過失の転得類型(5号、8号)の場合に限されています。施行は令和6年4月1日です。

8 その他(不正競争防止法違反の刑罰の厳重化)

詳細は経済産業省配布の「不正競争防止法令和5年一部改正テキスト」等に詳細な記載があります。
https://kaiseisetsumei-jpo2023.go.jp/wp-content/uploads/2024/01/e46bc3784fb6b31c4f587cd898137fdf.pd

 

 

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