飯島国際商標特許事務所
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記号・符号的商標と商標登録

2021-11-23

商標は、本質的に商品及び役務の目印となるもの、すなわち自他商品・自他役務識別標識です。
法律により保護に値する商標は、自他商品・自他役務識別標識としての機能を発揮し得るもの(商標の識別力を有する)というのが、ほぼ全世界の共通の解釈です。
それでは例えば「AB」「A2」など「2文字以下のアルファベット・数字から構成される商標」(以下「記号・符号的商標」とします。)は、法律により保護に値する商標でしょうか。

結論から申しますと、世界各国により捉え方は様々です。
まず、日本では、記号・符号的商標は、「商品の品番、型番、種別、型式、規格等又は役務の種別、等級等を表した記号又は符号」として一般的に使用されている実情から、商標の識別力を有さないものと解釈されています。
具体的には、商標法第3条第1項第5号「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」(商標登録を受けることができない商標)に該当するものとして、使用により商標の識別力が発揮される事情(商標法第3条第2項の適用)がない限り、商標登録を受けることができません。

これに対し、米国はどうでしょうか。
米国の商標登録例を見ますと、日本のように画一的に判断しておらず、記号・符号的商標が商標登録されている状況が見られます。ただし、商標権侵害の場面では、その使用態様から商品の品番や型番などの使用であり、商標としての使用でない場合には侵害が否定されると解釈されています。
EUTM(欧州連合商標)[旧CTM:欧州共同体商標]の商標登録例を見ましても、日本の登録状況と異なり、数字や文字と商品・役務との関係を考慮した上で商標登録を認めています。
その他、インドネシアやブラジルなども、日本と異なり、原則的に記号・符号的商標の登録を認める実務です。
中国については、アルファベット1文字又は2文字、1桁の数字について登録を認めませんが、アルファベット1文字と数字の組み合わせには登録を認めており、オーストラリアは、アルファベット1文字、1桁又は2桁の数字でなけれな、登録を認めています。これら2国は、若干日本と異なるという印象です。

上記のように日本の実務が、そのまま海外の実務に当てはまるわけではありませんので、海外への登録の際には、日本の実務と切り分けて判断する必要も出てきます。
記号・符号的商標の使用だから、第三者の先行商標の調査をしなくてよいというものでもありません。
また、記号・符号的商標の使用が可能かどうかも考える際には、現実の使用態様も含めて、法律により保護に値する商標(自他商品・自他役務識別標識としての機能を発揮し得るもの)なのか検討することも大切です。 

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