飯島国際商標特許事務所
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令和5年意匠法の改正

2023-06-10

【令和5年改正意匠法】
この回は意匠法の改正についてお話を致します。意匠物品等に外観に係る創作であり、容易に
新規性が喪失しやすいものです。そのため、現行意匠法では新規性喪失の例外(意匠法4条)
を設け、公開された日から1年以内に出願をし、出願と同時に新規性喪失の例外適用を受けた
い旨を記載した書面を提出し、出願から原則30日以内に同規定の適用を受けることができるこ
とを証明する書面(例外適用証明書)を、特許庁長官に提出しなければならない(同条第 3 項)
とされてます。

 しかし、近年では、複数の EC サイトを利用した製品の販売や、複数の SNS を活用した製品
PR が広く行われ、発売前の製品に関する断片的な情報を公開し閲覧者の興味を引くことを意図
した広告手法も現れるなど、公開態様が多様化・複雑化しており、意匠の公開に関する情報の管
理が困難となっています。また、中小企業等では、クラウドファンディングのように意匠を公開
して投資を募ってから製品化を決定する手法や、外部の協力企業や消費者と協働して製品を完成
させる製造委託や共同開発が行われており、開発過程における公開の機会も増えています。

このため、出願後30日以内に、公開された意匠の全てを証明書面として提出することは非常に困
難であり、意匠保護が十分にはかれないということが生じていました(令和 4 年 12 月 7 日産業
構造審議会知的財産分科会意匠制度小委員会 資料参照)。
そこで、令和5年改正によって、この証明書面の提出について法改正を行いました。

2 改正内容
【条文】
   前項(意匠4条2項)の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願
と同時に特許庁長官に提出し、かつ、意3条1項1号又は2号に該当するに至った意匠が4条2項の規定
の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面を意匠登録出願の日から30日以内に特
許庁長官に提出しなければならない。ただし、同一又は類似の意匠について意3条1項1号又は2号に
該当するに至る起因となった意匠登録を受ける権利を有する者の二以上の行為があったときは、その
証明書の提出は、当該二以上の行為のうち、最先の日に行われたものの一の行為についてすれば足りる

(意4条3項)

【内容】
     以下の要件を満たした場合には、証明書面を個々的に提出しなくても新規性喪失の例外適用を受け
  ることができます。

【要件】
   ① 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して公知となった意匠であること

   ② 法定期間内に提出した証明書により証明した意匠の公開時以後に公開された意匠である
      こと
     ◆ 証明書記載の公知意匠より、先に公知になった意匠は救済の対象外となりますので、留意をし
       て下さい。
   ③ 法定期間内に提出した証明書により証明した意匠と同一又は類似する意匠であること
     ◆ 証明書面と非類似の意匠については、別途証明書面を提出しなければなりません。

 

 

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