飯島国際商標特許事務所
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韓国で著名商標の希釈化にあたり登録は無効であるという点を指示した大法院の判断

2023-12-25

韓国で、著名商標の希釈化にあたるとの判断を大法廷で最近判示したものがあり、注目されています。

【要旨】
韓国大法院では、商標が著名商標である先使用商標と全体的に類似し、非類似商品に使用しても当該「著名商標の識別力を害するおそれ」があるとの判断が示されました。同旨の規定は、不正競争防止法(韓国不正競争防止法第2条第1号(ハ))にありますが、商標法については初のものと思われます。

【関連法規】
韓国商標法34条1項11号では、「需要者らに顕著に認識されている他人の商品若しくは営業と混同を起こさせるかその識別力または名声を損傷させる恐れがある商標」は登録にならない旨規定されています。
当該規定前は、我が国の商標法4条1項15号に、後段は4条1項19号に相当するものとなります。なお大審院で判断した、識別力の損傷についての立法趣旨は、希釈化理論を法制化したものであって、需要者の出処の誤認・混同のおそれはないとしても、著名商標の識別力や名声を損傷させるおそれがある場合に、登録を許容しないことで商標に化体された財産的価値を保護するという私益的性格が強い規定です。また「識別力の損傷」とは、他人の著名商標を混同可能性のない非類似の商品に使用することにより、著名商標の商品標識や営業標識としての出処表示機能を損傷させることをいい、これには識別力を弱化させる場合も含む(韓国審査基準参照)とされています。

【事件の概要】
著名商標レゴ社(被上告人)のブロック玩具に関する先使用商標「LEGO」を引例として、製薬会社(上告人)の出願・登録商標「LEGOCHEMPHARMA」(指定商品:医療用薬剤など)に対する無効審判事件に対する大法院の判断となります。

1:商標の類否関係
商品関係は非類似ですが、引例となったレゴ社の「LEGO」と、登録商標「LEGOCHEMPHARMA」については商品の出所表示機能を遂行できる要部は「LEGO」部分であるといえ、本件において提出された資料だけでは被告の主張のように本件登録商標が「LEGOCHEM」と認識・使用されるものであるとは断定し難く、両商標は類似であると判断しました。

2:希釈化の有無
登録商標「Lego chemistry」が「医薬合成技法」という意味で化学分野において広く使われる一般的な学術用語であるとは断定できず、上告人が自ら遂行する新薬の研究・開発の特徴を表すために必ず「Lego chemistry」という用語の略称を使用する必要性があったとも認められない。上告人が新薬の研究・開発の特徴を表出するために必ず「LEGO」標章を使用する必要性はない点などを考慮すれば、先使用商標との連想作用を意図して出願したと認めるのが妥当であるとして、「医療用薬剤」などに使用する場合、先使用商標が有する識別力、すなわち単一の出所を表示する機能を害するおそれがあるとしてと判断しました。

実務上、今後影響を与える可能性が高いものと思われます。


上告番号:2020フ11943号
判決言い渡し日:2023年11月16日

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