令和5年不正競争防止法(営業秘密に関する事項の)の改正
2024-05-26
【営業秘密関係の改正:5条の2の推定規定の拡張】
営業秘密関連の不正競争が改正されました。詳細内容は以下の通りです。
1:営業秘密の使用等の推定規定の拡充(不正競争防止法5条の2の拡充)
営業秘密営業秘密の使用行為の立証責任は、当該営業秘密の被侵害者の側にあるのが原則です。
しかし、使用行為は侵害者側に工場内で行われている場合が多く、受益者である原告が立証することは非常に困難です。
また、技術上の営業秘密を不正に取得した者については、当該営業秘密を使用することが通常であるとの経験則が存在します。
これらを踏まえ、平成27年改正時に、営業秘密の不正使用行為に関する一定の事実の立証責任を侵害者に転換する規定が設けられました。
但し、令和5年改正までは、この適用が認められるのは、営業秘密の取得時点で、それが営業秘密であることについて悪意又は重過失があるケ ースで第2条第1項第4号、第5号及び第8号に掲げる不正競争行為のみでした。そのようなケースでは、当該営業秘密を不正使用する蓋然性が高いと考えられたからです。
他方で、第2 条第1項第6号、第7号及び第9号に掲げる不正競争行為は、営業秘密の取得時点で、それが営業秘密であることについて悪意又は重過失がないケースであるため、そうではないケースに比べて営業秘密を不正使用する蓋然性が相対的に低いと考えられていました。そこで、本条の対象外とされてきました。
しかし、オープンイノベーションが進む中、雇用の流動性の観点から、元々アクセス権限を有する者や、取得時善意の場合にも、従来のような悪質性が高いと考えられる場合には、5条の2の推定規定が適用されるようになります。
2 営業秘密に関する不正競争の民事裁判(不正競争防止法19条の2,19条の3)
日本国内で事業を行う企業の営業秘密が侵害された場合、刑事では海外での侵害行為が処罰できるという旨の規定があります。
一方、民事の場合には、事案により日本の裁判所で審理が出来るか否かが不明確になります(この場合は法の適用に関する通則法17条の規定により、「結果発生地」が管轄になり得ますが、その解釈次第では日本の裁判所の管轄ではないとされる可能性がありました。
そこで、日本国内で事業を行う企業の、日本国内で管理体制を敷いている営業秘密に関する民事訴訟であれば、海外での侵害行為も日本の不正競争に基づき権利行使ができる旨が明確化されました。
これにより、中小企業も日本の裁判所で日本語で海外の企業を提訴可能であることが明確化されました。
ただし、「専ら海外事業の目的のためにのみ用いられる営業秘密」の場合は、改正法の適用はなされず、従来と同様に「民事訴訟」や「法の適用に関する通則法」の基づき裁判所が判断することになります。