飯島国際商標特許事務所
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韓国2024年5月1日施行の改正商標法の概要

2024-04-07

韓国 改正商標法5月1日施行へ

 韓国では商標法一部改正法律案が2023年10月16日に国会本会議で可決され、10月31日付で公布されました。当該改正法は2024年5月1日から施行されます。以下、主な改正内容について記載致します。

1:商標共存同意制度の導入
韓国でも日本のコンセントと同様の規定が施行されます。ただし、日本のコンセント制度と異なり、同意書の提出があれば混同の有無を問うことなく並存登録が認められます。そのため、日本のいわゆるコンセント制度とは異なり、同一商標・同一商品の場合はコンセントの対象とはならない旨が、商標法に規定されています(商標法34条7項但し書き)。

2:不正使用取消審判の採用
日本の52条の2の審判と同様に、並存登録された類似する商標が不正競争の目的で使用をし、出所混同を生じさせた場合には商標権は取り消される旨の審判の規定が導入さ荒れました。なお当該取消審判は除斥期限により取消事由に該当する事実がなくなった日から3年を経過した後には請求することができません(商標法122条2項)。
この点、日本の商標法の場合は除斥期間が5年と長くなっている点には留意が必要です。

3:国際商標登録出願及び国際登録商標を基礎とした商標権の分割
従来はマドリッド議定書による国際登録が韓国を指定国とした場合、韓国特許庁で当該国際商標登録出願及び国際登録基礎商標権に対する分割出願ないし商標権の分割を不許としており、外国出願人にとって不便があるとともに、実質的に内外人間の不均衡がありました。これに対し改正案は、国際商標登録出願及び国際登録基礎商標権に対する分割出願ないし商標権の分割を制限することができるように改正されております。

4:国際商標登録出願の国内登録商標への部分代替認定
従来、代替が認められるためには、国内商標権の指定商品などの全てと、国際商標登録の指定商品の全てが含まれている場合のみ、国内代替が認められてきました。そのため、最近改正されたマドリッド議定書の規則と一致しない部分がありました。このため改正法ではでは国内登録商標の指定商品が国際登録商標の指定商品のうち一部のみ含む場合にも部分代替を認める規定を導入しました。
日本の場合は、従来より、部分代替を認めております。

5:使用による識別力認定の対象の拡大
これまでは、使用による識別力認定の対象が法文上「性質表示、顕著な地理的名称、ありふれた氏または名称、簡単でありふれた標章」のみ(33条1項3号~6号)に限定されていました。今改正では、我が国商標法3条1項6号に該当する、識別力のない総括事項「その他識別力のない商標」(33条1項7号)についても、使用により識別力が生じることが明確化されました。
わが国では、この点は3条2項により救済する点が明確化されていない点には優位が必要です。

6:納付された商標登録料の返還理由拡大
商標権の更新申請後に、商標権が発生する前に当該商標権が消滅商標権の全部または一部が消滅または放棄された場合にも、更新料金の一部等の返還がなされるように改正がされます(77条1項8号)。さらに、分割納付の後半部分についても、商標権の設定登録日または存続期間更新登録日から5 年となる前に商標権の全部または一部が消滅または放棄された場合には後半部分の更新料金の一部等が返還されるように改正がなされました(77条1項9号)。

7.商標権消滅規定の整備
商標権者が死亡し、相続人不存の場合には特許法やデザイン保護法等と異なり商標権が消滅する旨の規定がありませんでした。
そのため、商標の選択できる範囲が狭まるという問題がありました。このため、今改正では、相続人不存在の場合には商標権は消滅する旨の規定を導入し、その点を明確化しました。(106条2項)。
なお、韓国商標法では、従来より、商標権者が死亡し、当該商標権が相続されたにも関わらず、3年間、相続人がその商標権の移転登録をしなかった場合には、商標権者が死亡した日から3 年になる日の翌日に商標権が消滅され旨の規定があります(106条1項)。

8.出願人の利便向上
これまでは変更出願と基礎出願についてそれぞれ優先権主張等を別々に行わなければならず、ユーザーフレンドリーの見地から問題がありました。このため、変更にかかる元の出願でその手続きを行っている場合には、変更に係る新たな出願でも優先権主張を行ったものとみなし、再度、優先権主張やその書類などの手続きは不要となります(44条5項)。
なお、出願分割については、従来よりその旨の規定が存しております(45条3項)。

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