令和5年不正競争防止法(2条1項3号:形態模倣行為について)
2024-04-29
商品形態模倣行為【不正競争防止法2条1項3号改正】
リアル商品の形態を仮想商品に模倣した場合、または今後生じるであろう、仮想商品をリアル商品の形態として模倣した場合の差止などを認めるために、不正競争防止法2条1項3号が改正されました。
確かに、従来の商品形態模倣行為が有体物を念頭に規定されていたものであり、不正競争防止法2条1項3号でも、その実施行為中として、「電気通信回線を通じた適用行為」が規定されていなかったものに、今改正でその旨の規定が設けられました。
また、商品形態の「商品」には、他法でも商品を条文として規定していないことから、今改正に際しても、無体物が含まれる点を条文化せず、逐条解説の記載事項としています(令和6年4月1日施行版:逐条解説40頁)。この点からも、無体物に対する商品形態模倣行為に対しても、本項の不正競争になることは明らかです。
この点は、逐条解説43頁には、「①リアルの商品の形態をデジタル空間上や、②デジタルの商品の形態をデジタル空間上で模倣して提供する行為、③デジタルの商品の形態をリアル空間で模倣して提供する行為も不正競争と位置づけられるようになった」との記載から明らかです。
ただ、上記態様の全てに、2条1項3号の趣旨「先発者の模倣者は商品化のためのコストやリスクを大幅に軽減することができる一方で、先行者の市場先行のメリットは著しく減少し、模倣者と先行者との間に競争上著しい不公正が生じ、個性的な商品開発、市場開拓への意欲が阻害されることになる」が当てはまるのでしょうか。
逐条解説では、デジタル商品⇒仮想商品の理由付けが記載されていないようです。これは、将来生じ得るであろうことから、現時点では明確に趣旨からの理由付けが出来なかったものと思われますが、今後の状況をよく見ていく必要があるものもあると思われます。
また今回の改正では、模倣(不正競争防止法2条5項)の部分が改正されていません。ここで、模倣とは、「依拠」と「同一性」をいうとされていますが、果たしてリアル商品を仮想商品とした場合、またその逆の場合に、同一性があるのか?という点は明確ではありません。狭く解釈すると、立法の意義がないことになる一方、」あまり広く認めると、趣旨や規定に悖ることも考えられます。
今後の裁判所は、どう判断するのか非常に興味があるところです。