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令和5年著作権法 新裁定制度

2024-06-27

1 初めに

特許の強制許諾通常実施権制度が初めて請求され(裁定請求2021-1)、その結論がどうなるかについて関心がもたれました。最終的には請求後、22回の⼯業所有権審議会発明実施部会3年ほど経過した時点で、和解に終わり、裁定請求が取下げとなった旨が特許庁のホームぺージに掲載されています。

https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/kogyo-shoyu/award2021-1.html(特許庁)

 この点が注目を浴びた要因の一つが、当該裁定請求が我が国初の93条の裁定を下すものとなる可能性があるという点からでした。
他法、著作権法にも裁定制度(著作権法67条~70条)が規定されていますが、文化庁のホームぺージから、かなりの数の裁定請求がなされ、それが認められている例が掲載されています。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/chosakukensha_fumei/pdf/94050101_04.pdf(文化庁)

著作権法の場合、無方式で権利が生じることから、公示が徹底しておらず著作者不明等の場合には、著作物利用者が、著作権者の承諾がとり難いということも要因の一つかもしれません。

 

2 現在の著作権法の問題点
このように、多くの裁定が認められている著作権法ですが、従来の著作権者不明の場合の裁定(67条)では、「著作権者の不明その他の理由により相当の努力を払ってもその著作権者と連絡を取ることができない場合」と規定され、裁定の請求を認めることがかなり困難でした。
特に、デジタル化、DX の進展により、誰もがコンテンツを創作 ・公表し、発信、利用することが容易になったことから、これまで主流であった出版社やテレビ局を経由するような「プロ」のコンテンツとは異なり、インタ―ネット上にはアマチュアを含む一般の方が創作したコンテンツが増加し、利用される機会が増えています。

これらのコンテンツに係る著作物の場合、著作権者が不明ではなく、著作権者に問いあわせを行った場合でも、相当期間が経過しても返答がなされない場合もあります。
その場合、67条の裁定の対象とならないことから、著作物の利用ができないということが生じる恐れがあります。
そこで、令和5年改正で新たな裁定制度(67条の2)を設け、著作物等の利用の可否等の著権者等の意思が確認できない場合等の要件を満たす場合に、文化庁長官の裁定を受け、著作物等を利用することを可能としました。(令和5年公布:施行は公布のあった日から3年以内とされています)。

3 従来の裁定制度との関係
⑴ 新設された裁定制度は、著作権者との保護と利用のバランスを図るために、著作権者からの申し出がなければ、最大3年間、裁定により定まった要件に従い、当該著作物を利用するができます。
・申し出があった場合には、ライセンス契約を締結して個々的な条件下で、当該著作物を利用できます。
・なお、著作権者からの申し出がない場合には、再度、新たな裁定を請求して更に3年間、著作物の利用をはかることができます。
⑵ 他方、従来の裁定制度では、著作権者からの申し出があった場合でも、裁定で定め期間は利用ができますので、従来の裁定制度も併存しています。

4 裁定の窓口の一本化
⑴ 新たな裁定制度の創設に当たり、その手続の迅速化・簡素化並びに適正な手続を実現するため、文化庁長官による指定 ・登録の関与を受けた窓口組織が利用者の窓口となって手続を担うことになります。
⑵ 窓口組織については、実施する業務や機関の機能に応じて、①補償金等を受領 ・管理する指定補償金管理機関、②新たな裁定制度の申請の受付・要件確認・使用料相当額算出を行う登録確認機関として規定されています。なお、当該窓口では、2つの側面を併有するものを1の機関として指定することもできます。

【参考】文化庁 著作権課
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/r05_hokaisei/pdf/93999801_01.pdf

 

 

 

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