飯島国際商標特許事務所
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各国のコンセント(アジア⑴)

2024-07-29

 日本では商標のコンセント制度が、本年の4月1日から施行、韓国は5月1日から施行されています。そこで、先ずはアジアの幾つかの国におけるコンセント制度の可否等について以下のようにまとめました。
残りの国々、他の地域における国々に対しても暫時掲載していきます。

1 韓国コンセント(完全コンセントに近い)
⑴ 法的根拠:商標法33条7項但し書
⑵ 同意書の提出時期
・出願時、または意見書等の対応時に可能(商標法施行規則第26条の2第1項)
・同意書の提出ができなかったり、その内容を補正しようとする場合にも提出可 (商標法施行規則第26条の2第2項)
◆ 具体的には以下の時期
・出願公告前:出願時から出願公告または特許庁の拒絶決定前まで
・出願公告後:異議申立に対する答弁書提出期限または特許庁の職権拒絶に対する意見書提出期限内
・再審査請求時:再審査請求期限内(つまり拒絶決定書受領後3ヶ月以内)
・拒絶決定不服審判請求時:審判請求時から特許審判院の審理終結前まで
⑶ 同一商標、同一商品のコンセントの可否
・不可(商標法33条7項但し書き括弧に記載)
∵ 商標登録出願人も登録を受けることができない商標であることから、コンセントによる併存登録はできない。
⑷ 条件付き共存同意書は不認定
・期限・地域制限、法律効果の一部排除等の条件がある共存同意書は認められない。
⑸ 周知・著名商標との間のコンセント
・不可

2 香港(留保型コンセント)
⑴ 法的根拠:商標法12条⑻
「本条の如何なる規定、先の商標又は他の先の権利の所有者が登録に同意する場合は,商標の登録を妨げない。
⑵ 留意事項:
① 同意書を提出した場合、併存登録を認めるとの規定はない
② 特許庁の判断を拘束しない
⑶ 同一商標・同一商品の場合のコンセントの可否
・可
⑷ 周知・著名商標のとのコンセントの有無
・可能(商標法12条8項)
⑸ 同意書の提出時期
・出願時・拒絶理由対応時
⑹ 同意書の形式の有無
・有(サンプル例がある)

3 台湾(留保型コンセント)
⑴ 法的根拠:商標法30条1項10号但し書
⑵ 留意事項:
① 要件
引例である先の商標権者が同意し、且つ明らかに不当ではない場合
② ポイント
明らかに不当ではない場合(商標法施行細則第30条)
・先行商標と同一であって、指定商品・役務もまた同一である。
・先行商標に係る権利の処分が裁判所に禁止されている。
・その他主務官庁が明らかに不当であると認められるとき。
③ その他(商標審査基準:誤認混同のおそれの審査基準7.3)
・商標同一、商品・役務が同一の場合は、コンセントの対象とはならない
・団体商標で、使用規範書により指定商品の一定の品質または特性が要求されているにもかかわらず、団体商標の権利者が併存登録の商 標商品に同じ条件を要求しなかった場合はコンセントの対象とはならない。(7.3.4)
⑶ 同一商標・同一商品の場合のコンセントの可否
・不可(審査基準で除外)
⑷ 周知・著名な商標とのコンセントの有無
・可
⑸ 同意書の提出時期
・特に決まっていない(出願時も可能)
⑹ 同意書の形式の有無
・有
https://www.tipo.gov.tw/public/Attachment/412181045715.pdf


4 シンガポール(留保型コンセント)
⑴ 法的根拠(商標法8条9項)
⑵ 留意事項:
① 要件
・引例の商標権者から同意書が提出された場合、自己の裁量で商標を登録することができる。
② ポイント
・同意書を提出しても、登録を認めるか否かは審査官等の裁量。但し、同意書提出をすれば出所混同の虞が少ないと考えられるため、併存登録の可能性が高い。
⑶ 同一商標・同一商品の場合のコンセントの可否
・可
⑷ 周知・著名な商標とのコンセントの有無
・可
⑸ 同意書の提出時期
・拒絶理由対応時
⑹ 同意書のフォーマットの有無
・統一的なフォーマットはない。

5 ベトナム(留保型コンセント)
⑴ 法的根拠:条文上の規定はないが運用上認められる。
⑵ 留意事項:
① 要件
・先行権利者の利益を害さず消費者に誤認混同を与えない場合
② ポイント
・規定はないが、実施上、上記要件の下、コンセントは可能
⑶ 同一商標・同一商品の場合のコンセントの可否
・不可(運用)
⑷ 周知・著名な商標とのコンセントの有無
・可(運用)
⑸ 同意書の提出時期
・特段時期に制限はない

6 マレーシア(留保型コンセント)
⑴ 法的根拠(審査基準15.125:2003年版)
・先に登録されている権利の引用により出願が不成功に終わることが確実であると登録官が考える場合は,登録官は,事実上公衆の混同又は欺瞞の可能性がない証拠として,係属出願の登録に対する登録所有者の同意書を受理することができる。
⑵ 留意事項
① 同意書の提出は特許庁を拘束しない
② 事実上公衆の混同又は欺瞞の可能性がない証拠として採択ができる。
⑶ 同一商標・同一商品の場合のコンセントの可否
・可
⑷ 周知・著名な商標とのコンセントの有無
・可
⑸ 同意書の提出時期
・特段時期に制限はない

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