飯島国際商標特許事務所
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欧州の意匠規則の改正

2025-03-26

欧州の「意匠の法的保護に関する指令」と「共同体意匠規則」は、約20年もの間、実質的に変更されませんでした。そのため、欧州の意匠制度は現代社会の実情に適合しなくなっており、これらの改正が企図され、意匠の法的保護に関する改正指令と、共同体意匠に関する改正規則が公表され、2024年12月8日から改正規則が施行されました。これらは、以下に示すことを目的としています。

【改正の目的】
1:デザイン保護の近代化、明確化、強化
2:意匠保護の利便性の向上
3:知的財産システムへのアクセスの改善
4:知的財産に対する信頼と尊重の構築
5:欧州連合知的財産ネットワーク(EUIPN)の持続可能性の確保

また、改正の主な内容は以下の通りです。

【主な改正点】
1:名称の変更
共同体意匠との名称がEU意匠に変更される(規則1⑵)。  
2:意匠の定義の拡大(規則3⑴)
意匠にアニメーションが含まれるように改正され、そのアニメーションには、動きや変化が含まれるように明記されています。
3:「製品」の拡大(規則3⑵)
「製品」とは、コンピュータプログラム以外の工業製品または手工芸品を意味し、物理的な物体に具現化されているか、非物理的な形で具体化されているかに関係ないとされ、グラフィック作品またはシンボル、ロゴ、表面パターン、タイポグラフィ書体、およびグラフィカルユーザーインターフェイスも含まれると明記されました。
4:見本出願の廃止
見本での出願は件数が少なく、かつ公示が面倒であることから廃止されました。
5:複数意匠一括出願(規則37)
1つの出願に含まれる複数意匠は、同一のロカルノ分類に属するものでなくてはならないとの要件は削除され、分類の異同を問わず、1つの出願で50の意匠の出願が出来るようになりました。これにより、出願手続きを容易にすることができるようになります。
6:出願日の認定(規則38)
出願日の認定に際しては、商標同様、出願料を支払うことが要件となります。
出願料の支払いは、出願手数料を当該書類を提出してから1ヶ月以内に納付することを条件とします。
7:意匠権の排他権の拡大(規則19条)
意匠権の排他権に「デザインを記録する媒体またはソフトウェアを作成、ダウンロード、コピー、共有、または他者に配布すること。」が規定され、意匠権の効力が、登録意匠の3D印刷にも及びます。
この追加は主に3Dプリンターの技術進歩と利用増加を背景とするものです。
8:登録表示(規則26条⒜)
EU意匠の登録者は、意匠が組み込まれている製品または意匠が適用されている製品に、円で囲まれた文字Dを表示することにより、意匠が登録されていることを公に通知することができます。
9:更新(規則50条⒟)
更新は登録の満了前の6か月以内に提出する必要があります。更新料もその期間内に支払うことが必要になります。満了後さらに6か月以内に請求を提出し、手数料を支払うことができますが、その場合には割増料金を支払うことが必要になります。
10:修理条項(規則20条⒜)
今回の改正の最大のポイントであり、複合製品の修理に使用されるスペアパーツに対する意匠権の行使を制限するものです。そのため、従来、意匠権を有する者(例えば、自動車メーカー)は導入には反対をしていました。修理条項によってスペアパーツ市場の自由化を促進し、より低価格で消費者に修理部品の提供を可能にできるようになります。なお、この規定は、該部品のデザインが複合製品の外観に依存しており、該部品が複合製品の元の外観を復元する目的でのみ用いられる場合に限り適用されます。また、複合製品の構成部品の製造者または販売者が、製品上の明確かつ目に見える表示を通じて、または別の適切な形式で、複合製品の修理の目的で使用される製品の商業的起源および製造業者の身元について消費者に適切に通知しなかった場合、発動できません(20条⒜2項)。

 

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