飯島国際商標特許事務所
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韓国で特許を受ける権利が共有の場合でも、審決等取消訴訟単独で提起が出来るという大法院の判決がありました

2025-04-04

【韓国:特許を受ける権利が共有の場合単独で審決等取消訴訟を提起できる】

《2024フ10825拒絶決定(特)  判決言い渡し日2024年12月26日》
韓国で、共有に係る特許を受ける権利について審決取消訴訟を提起するには、共有者全員で訴えを提起する必要はなく、単独で訴えが提起できる旨の大法院の判決が示された。日本では登録前の共有の場合の審決等取消訴訟は全員で出訴しなければならいことから、韓国で共同出願を行い拒絶審決になった場合には注意を要することになる。

【事案】
特許出願人3名の共同出願につき進歩性がない旨の拒絶決定がなされた。このため、3名で共同で審判を請求したが、進歩性がないとの理由で請求棄却審決がなされた。その後、3名名義で審決取消しの訴えを提起したが、2名の訴訟委任状の提出がなかったため、共同出願人単独での訴訟提起となった。特許法院は共同出願人単独での訴訟提起を認めたが、進歩性がないとの理由で棄却判決となり、単独出願人名義で大法院に上告を行った。
大法院では単独での上告を認めたが、進歩性の判断は特許法院通りとして上告を棄却した。
【争点】
韓国特許法では、特許を受ける権利・特許権が共有の場合には、全員で審判をしなければならない(韓国特許法139条3項(日本の特許法132条3項に相当))旨の規定がある。その他、共有にかかる特則(民法の共有と異なる場合に特則)が多数存する。
なお、審決等取消訴訟の提起に際し、特許を受ける権利が共有の場合には、全員で訴えを提起しければならない旨の規定がなく、民法の原則に戻り、単独で提起可能とする考え方と、合一確定の要請から固有必要的共同訴訟と解して共有者全員で訴えを提起することが必要であると考える立場があり見解が分かれていた。
この点に関し、大法院は固有必要的共同訴訟とはいえず、権利の消滅を防ぐための保存行為と解し単独での審決の取消しを求めることができると判示した。
【考え方】
⑴ 単独で提起できないことによる不利益
全員でしか出訴しなければならないとした場合には、他の共有者の協力を得ることができない場合には、裁判を受けることができなくなる。この結果、拒絶審決が確定してしまう。
⑵ 合一確定の要請に反しないか
共有者の単独での出訴を認めた場合でも、その訴訟において審決を取り消す判決が確定した場合には、取消しの効力は他の共有者にも及び、特許審判院における共有者全員との関係において審判手続が再開され(行政訴訟法第29条第1項)る。一方、審決取消請求を棄却する判決が確定して審決が維持された場合には、審決に不服を申し立てなかった他の共有者の権利に影響を及ぼさない。合一確定の要請に反しない。
⑶ その他
特許法に規定がない場合には、民法の共有の考え方を適用するという考え方について。
本判決ではないが、知的財産権の共有はライセンスの際、譲渡の際等にも共有者全員の承諾がいることから、民法の共有(各人持分が存する共同所有形態)ではなく、合有(持分は観念的にしか存しないとする共同所有形態)的性質を有するものであり、特許法に特別規定がない場合には民法の共有の考え方を適用することは難しいとする見解がある。この見解に対しては、特許の共有は、共同の目的や同業関係に基づいた組合を形成して商標権を所有すると解することはできない。制限規定は、合有としての性質からではなく、無体財産としての特則から来るもので、無体財産の共有は民法の共有概念とは変わらない。そのため、特則として特許法等に定めがないものは、民法上の共有の考え方を適用すべきとする判決(大法院2004年12月9日言渡2002フ567判決)がある。
大法院は特許を受ける権利が共有の場合に共有者単独での訴え提起が可能とは判示した。
日本では、特許を受ける権利が共有の場合には、共有者全員で出訴する必要【平成6(行ツ)83:「磁気治療器事件」平成7年03月07日 最高裁判所第三小法廷】があり、非常に興味深い判決であると思わる。



 

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