商標制度に関する検討課題についての商標審議会が開催される
2025-07-08
1 初めに
商標法の問題点を議論する、産業構造審議会知的財産分科会第12回商標制度小委員会が6月12日に開催されました。この時点では、審議会の議事録が公開されていないことから、具体的に審議内容がわかりませんが、事前に公開されている、配布資料によると以下の事項が審議対象になるもようです。
2 審議内容
⑴:海外サーバーなどで商標を付する行為が使用に該当するか。また商標の使用についての改正の必要の有無について。
インターネットでの取引において商標が表示されている場合、例えば、商標の広告的な使用に該当し得るが、属地主義の下、海外のサーバーにあるショッピングサイトにおいて、日本の登録商標が表示されている場合は商標の使用に該当するか。
現在、特許法の審議会でも同様の議論が交わされていますが、商標の場合の特性を踏まえ、どのような場合に日本国内における使用とするべきか審議されています。
この点については、わが国では不使用取消審判の裁判例や、侵害についての裁判例があります。
裁判例で示された諸事情やWIPO勧告で示された諸事情を踏まえ日本の需要者対するものと評価される場合には使用に該当すると考えられ、現行商標法の規定でも対応できると考えられます。
今後、諸事情や改正の可否を踏まえ審議がなされていきます。
⑵:仮想商品に係る商標の登録可否
商標制度においては、仮想商品に係る商標については、現行法で登録が可能です。
この場合、仮想商品と現実商品との関係については、生産部門・販売部門・原材料及び品質・用途・需要者の範囲等が一致しない場合が多いため、4条1項11号に該当しません。また権利行使に関しても商品等が類似関係にたたないことから権利行使はできないとされています。
なお、引例たる他人の登録商標が周知・著名性を有する場合には、4条1項15号に該当し登録がなされません。権利行使に関しては、不正競争防止法2条1項1号や2号に該当するとして権利行使ができる場合があります。
また仮想商品相互については、需要者等の共通性が認められるため、類似と判断され、4条1項11号に該当し登録を受けることができません。また権利行使に関しても商標法37条などに該当することから差止等も行うことができます。上記のように仮装商品の問題に関しては現行の商標法や、不正競争防止法で対応ができますが、各国の動向や意匠小委員会の見解を踏まえて議論をすべきとされています。
⑶:生成AIと商標との関係
生成AIと関係で、その成果物が保護対象となるか、引例となり得るのか特許法や意匠法で議論されています。同様のことは創作物を保護する体系ではない商標法では問題とならないと考えられます。審議会ではこの点を踏まえて更に審議がなされる予定です。
審議会の内容が具体的に公開されましたら、更にその内容につき掲載して参ります。
【参考】
産業構造審議会知的財産分科会 第12回商標制度小委員会
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyokouzou/shousai/shohyo_shoi/document/t_mark_paper12new/02.pdf
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyokouzou/shousai/shohyo_shoi/document/t_mark_paper12new/02.pdf