商標権(知的財産権全般)侵害罪に新刑罰導入
2025-09-22
2025年6月1日から刑法が改正され、懲役刑、禁錮刑が廃止され拘禁刑に一本化されました。これに伴い商標法の刑事罰も改正されました。
刑事罰が改正された理由としては以下のものが挙げられます。
【理由】
⑴ 懲役刑は作業が刑の本質的要素であるため、どの受刑者も一定の時間を割いて刑務作業をしなければいけませんでした。しかしこれでは改善更生や社会復帰のために必要な指導を行う時間の確保が困難な場合があるという課題が指摘されていました。また、受刑者の高齢化が進むにつれ一律の刑務作業が困難になってきた点も指摘されていました。
⑵ また禁錮刑は懲役刑と異なり作業を行う必要性がなく、作業は本人のも意思に基づいて行われることから、改善更生や円滑な社会復帰に有用な作業であっても、本人が希望しない限り実施させることができないという問題がありました。更に、禁錮の受刑者の数は非常に少なく、その多くは刑務作業に従事していることから懲役と禁錮をわける必要性が少ないとも拘禁刑に一本化する契機の一つとなっていました。
⑶ 拘禁刑ができたことにより、受刑者の特性に応じた更生プログラムを、従来よりも柔軟に行うことができるようになり、再犯防止がはかられるように期待されています。
上記のような刑法の改正により、商標も刑事罰の適用について以下のように改正がなされています。
【商標法の規定の改正】
(侵害の罪)
第78条
商標権又は専用使用権を侵害した者(第37条又は第67条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行った者を除く。)は、10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第78条の2
第37条又は第67条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行った者は、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(詐欺の行為の罪)
第79条
詐欺の行為により商標登録、防護標章登録、商標権若しくは防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録、登録異議の申立てについての決定又は審決を受けた者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処する。
(虚偽表示の罪)
第80条
第74条の規定に違反した者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処する。
(偽証等の罪 )
第81条1項
この法律の規定により宣誓した証人、鑑定人又は通訳人が特許庁又はその嘱託を受けた裁判所に対し虚偽の陳述、鑑定又は通訳をしたときは、3月以上10年以下の拘禁刑に処する。
(秘密保持命令違反の罪)
第81条の2
第39条において準用する特許法第105条の4第1項の規定(第13条の2第5項において準用する場合を含む。)による命令に違反した者は、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
【参考】
法務省https://www.moj.go.jp/content/001437235.pdf