中国商標法概要
2025-10-17
【中国の商標制度概要】
1:商標の保護対象
商品、役務、団体商標、証明商標(商標法第3条)
2:商標の種類
文字商標、図形商標、記号商標、立体商標、色彩の組合、結合商標、音声(商標法第8条)
・単一色の商標は、商標法8条の定義から認められないようにも見える。
登録から排除する合理的な理由はないとの立場もある。
(単色商標は2013年改正された商標法改正草案採択された文章では削除された。もちろん、商標
定義の最後に『等の標章』という文言があるため単色商標は絶対に排除されたわけではないとい
うこともできる。
・位置商標については、中国商標法は明確に規定していない。
3:出願人の資格
自然人・法人
4:現地代理人の有無
要
・国が指定した代理資格を有する組織(商標法第18条)
5:出願言語
中国語
6:存続期間・更新
10年・10年ごとに更新ができる。(商標法第39)
7:出願日(到達主義)
日本と異なり、商標局に到達した日が出願日となる、到達主義が採択されている。
8:方式審査
書類に不備がある場合は補正通知がされ、通常30日以内に補正する。
9:実体審査⑴
中国商標法では出願受理から9か月以内に審査を完了すべきとされている。通常約4か月間ぐら
いで、一次審査結果が通知される。*1(商標法28条)
・問題がなければ初歩査定がなされ、公告される
・審査期間の迅速化が進んでいるが、日本のような早期審査優先審査制度はない。
10:実体審査⑵(問題があった場合)
第三次改正により日本で言う意見書提出・補正書提出ができるようになった(それまでは直ちに拒絶査定)
・指定期間は15日以内
11:拒絶査定不服審判
有(商標法34条)
・書面通知後15日以内に商標評審委員会に審判請求をすることができる。
・9ヶ月以内に決定を下さなければいけない。
・商標評審査員会の決定に不服があるときは、通知を受領した日から30日以内に人民法院に提訴
することができ
12:一出願多区分性
第3次改正で規定された(商標法22条2項)。
・部分拒絶決定を受領したときに限り分割ができるのみ。拒絶決定不服審判、異議申立ての段階お
よび商標登録後は分割が認められていない。
13:出願公開制度
日本のような出願公開制度はない。その代わり出願公告制度がある(商標法28条)。
14:出願公告制度
出願書面受領後9月以内に審査を完了する。問題がなければ出願公告をする。
・当該公告は権利付与前に行われる。
15:異議申立て
出願書面受領後9月以内に審査を完了する。問題がなければ出願公告をする。
・当該公告は権利付与前に行われる。
・異議申立て期間は公告から3月(商標法33条)
・商標局に異議の申立てを行う
・申立てができる者(日本と異なり、理由により異なる)
→ 絶対的理由 → 何人も
→ 相対的理由は → 利害関係人のみ(第三次改正までは何人もであつた)*2
・異議申し立ての審査期間は通常12ヶ月程度
→ 6月間さらに延長できる場合がある
16:異議申立の決定に対する不服申し立て*3
・登録承認の決定を出した場合
→ 異議申立人は、審判を請求することができない。
→ 登録商標を無効宣言することのみを請求することができる。
・取消決定を出した場合
→ 通知をした日から15日以内に商標評審委員会に審判を請求することができる。
17:無効審判制度の有無
有第4次改正
・(2019年改正)で悪意の商標登録を無効理由に追加(商標法44条1項)
・日本と異なり、原則何人も審判請求することができる。
・但し、悪意著名商標の場合は、著名商標主のみが審判請求ができる。
・無効審判の審査期間は12ヶ月程度。 6月間、延長できる場合がある。
18:無効審判における除斥期間
有
・原則登録から5年間
・著名商標権については5年経過後も審判請求ができる
・著名+悪意を立証できれば5年経過後でも無効審判(商標評審委員会に審判請求ができる)
・但し、著名でない悪意商標の場合は5年経過すると審判請求ができない。
19:不使用取消審判
有
登録から3年間不使用であるならば登録商標は取り消しの対象になる(商標法第49条)
20:商標権の更新
有
・実体審査を要しない。さらに10年間更新される。回数に制限はない(商標法第40条)。
・日本と異なり期間満了前12ヶ月以内に更新手続きを行うことができる。期間満了後6ヶ月更新
手続きを行うことができる。
21:商標権の譲渡
有
・譲渡人と譲受人両者の共同申請(商標法42条)
・譲受人は当該登録商標を使用する商品の品質の保証しなければならい。
・日本と異なり、類似関係の商標権は一括して譲渡をしなければならない。
(連合商標と似ているが連合商標がしていた防護的機能はない)。
22:損害賠償(懲罰的色彩)
有
・悪意による侵害の場合は5倍まで損害賠償を請求することができる(商標法第63条)
→ 3倍まで(2013年第3次改正)
→ 5倍までに引き上げ(2019年第4次改正)
【注意点】
*1
中国には直接出願してくるとマドプロルートの出願がある。直接の場合は通常審査期間は6から
9ヶ月程度。
国際登録の場合は12ヶ月から18カ月程度かかる。中国の身を指定する場合、審査期間との関係
性で考えた場合は、直接出願を行うほうが権利化まで迅速という場合があり得る。
*2
日本と違い相対的理由での異議申立は、何人もできるわけではない。この点は、2103年改正(第
3次改正)で変わった(商標法33条)。
わざと異議申し立てを行ない、商標登録を遅延させる等があったことが背景事情とされている。
*3
維持決定の場合(商標権を維持する)場合は、改正前は商標評審委員会に対し審判請求ができてい
た。
しかし、これを認めると、行政内部で2回争う機会を付与することから、商標権の取得まで時間が
かかることになる。そのため、維持決定がなされた場合には、商標登録を認め、あとは無効審判で
争うように変更された。