飯島国際商標特許事務所

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韓国商標法概説

2025-11-26

【韓国商標法概説】

1 商標の要素
⑴ 伝統的商標
記号、文字、図形、立体的形状、色彩(単色・組合せ)、ホログラム、動き、位置商標
⑵ 非伝統的商標
音商標、匂い商標(嗅覚商標)音商標(2012年頃までに出願受入れが開始)

2 商標の種類
⑴ 団体商標:組合や法人が構成員の業務に関する商品・役務に使用する標章
⑵ 業務標章:営利を目的としない団体(例:赤十字社、YMCA等)が自己の業務を表示するために使用する標章。
⑶ 証明標章:商品・サービスの品質や原産地等を証明するために使用される標章(2016年改正で導入)。
⑷ 防護標章や地域団体商標等は明記がない(日本とは異なる)

3 出願言語
韓国で商標を出願する場合、願書や関連書類は韓国語で作成・提出することが必要です。

4 代理人の必要性
出願人が韓国外に居住している場合、現地代理人(韓国弁理士)を必ず通じる必要があります。その際、委任状の提出も求められます。

5 方式審査 
書類の記載事項や手数料納付の確認。不備があれば補正命令。審査官から補正命令を受けた日から30日以内に補正をする

6 実体審査
⑴ 絶対的要件の審査(識別力の有無)や相対的要件(先行商標との抵触関係)等の判断あり。なお使用により識別力が認められれば商標登録になる可能性があります。
⑵ 標準的な審査は約1年前後
⑶ 早期審査制度あり。

7 応答期間(2025年7月11日施行)
⑴ 応答期間が2か月 → 4か月に延長
⑵最大8か月まで延長が可能

8 出願公告(日本と違い権利付与前の異議申立て)
⑴ 日本のように方式審査後出願公開されるのではなく、 出願後直ちに出願公告される。
⑵ 公告から30日以内( 2025年7月改正)に何人も異議申し立てが可能。異議申立て期間の延長はできない
⑶ 異議申立て理由や証拠は、申立期間経過後 30日以内に補正可能。さらに、請求または職権により 1回限り30日延長可能(最大60日)
⑷ 審査官合議体が判断する。
⑸ 異議申し立てがなければ登録査定。登録査定後に料金納付で商標権発生する。

9 1出願多区分制
⑴ 採択
⑵「指定商品追加登録出願」制度あり(日本にはない)
・事後的に指定商品等を追加した出願を行い、追加登録が成立すると、元の出願または登録に「合体」され、一体とした商標権となる制度であり、管理が簡便となる制度を指します(韓国商標法86条参照)

10 指定商品・役務の記載
韓国では指定商品・役務の具体的な表現が求められ、包括的な表現は認められません。

11 部分拒絶制度(日本にはない)
⑴ 導入年
2023年2月4日施行の改正法で導入されました。
⑵ 内容
指定商品の一部にのみ拒絶理由がある場合、その部分のみ拒絶され、他の部分は登録可能となります。

12 再審査請求制度(日本にはない)
⑴ 導入年
2023年2月4日の改正で導入
⑵ 内容
出願人が拒絶査定を受けた後、審判手続きに進む前に、補正によって拒絶理由を容易に解消できる場合に、審査官に再度の審査を請求できる制度。拒絶査定を行った審査官が補正後の内容を見て登録を判断する制度です。登録者ができない場合には拒絶査定となり、審判請求することが可能です。再審査請求は1回限りで、マドリッド国際登録商標には適用されません。

13 コンセント制度
⑴ 導入年
2024年5月施行の改正法で導入。
⑵ 先行商標権者から書面による同意(コンセント)を得た場合、例外的に後願商標の登録が可能となる。ただし、完全に同一の商標・指定商品関係の場合は適用除外です。
⑶ 日本と異なり、完全コンセント制度を採択している

14 商標権の効力
⑴ 指定商品・役務に関して独占排他権を有する。
⑵ 第三者による同一・類似商標の同一・類似商品・役務への使用を排除可能。

15 存続期間
設定登録日から10年間

16 更新申請
⑴ 存在期間満了前1年以内に更新申請が可能(日本は満了前6月前から更新申請可能)
⑵ 満了後6月間は猶予期間あり

17 拒絶査定不服審判
拒絶査定に不服な場合、通知送達日から3か月以内に特許審判院へ不服審判を請求できます。審判で審決が覆れば登録へ進み、棄却された場合は知的財産高等法院(特許法院)へ審決取消訴訟を提起できます。

18 不使用取消審判制度
⑴ 登録から3年経過後、その商標が3年以上韓国国内で使用されていない場合、審判請求ができる。
⑵ 利害関係は問わない(2016年改正)

19 審決取消訴訟
特許審判院の審決に不服がある場合、審決謄本を受け取った日から30日以内に特許法院に審決取消訴訟を提起できます。さらに不服があれば大法院(最高裁)に上告可能です。

20 商標権の行使
⑴ 差止・損害賠償請求が可能
⑵ 損害賠償には損害額の推定規定があり、2025年7月からは懲罰的損害賠償が最大5倍に引き上げられた

21 刑事罰
最大で7年以下の懲役または1億ウォン以下の罰金が科されます(商標法第93条)。

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