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意匠制度に関する産業構造審議会知的財産分科会での議論

2025-12-24

【初めに】
制度改正の方向性VR技術の発展に伴い、仮想空間でのデザイン模倣被害が生じている現状を受け、意匠法の保護対象を拡充する方向で検討が進められています。現時点での検討課題及び方針は以下のようになっております。(産業構造審議会知的財産分科会 第21回意匠制度小委員会令和7年12月15日参考)

【現在の検討課】

1:保護対象
「操作画像」や「表示画像」に加え、「仮想物品等(仮想空間で用いられる物品及び建築物)の形状等を表した画像」を新たに保護対象とする方針です。

2:実施行為の問題点
実施行為に関する議論では、制作・流通・使用の各段階において、どこまで意匠権の効力を及ぼすべきかが中心的な論点となりました。
⑴:制作段階
制作段階では、練習や試作まで規制すると創作が萎縮し、実務でも外部に出ない試作にはクリアランス調査を行わないため、規制には消極的な意見が多くなされました。

⑵:流通段階
流通段階では、3Dモデルをプラットフォームで提供したり譲渡したりする行為は権利者の利益に直結し、無償でも価値が下がるため、規制すべきとの意見が多数を占めました。

⑶:使用段階
使用段階については、ユーザーの利用まで規制するかで意見が分かれ、権利者は規制を求める一方、一般ユーザーではなく侵害モデルを配置した者のみを対象とすべきだとする考えも示された。

3:更なる実施行為の問題点
ゲームやワールドの一部として組み込まれている場合、独立して取引されないのであれば規制対象外とすべきとの意見や、使われ方(象徴的かどうか)に応じて判断すべきとの意見がありました。

4:保護対象の議論
保護対象の議論では、「仮想物品等の形状を表した画像」を意匠として扱うために、①立体的形状を持ち任意の視点から見られること、そして②仮想物品としての用途や機能を備えることの2点が要件として確認されました。
ヒアリングでは、ゲーム内の自動車や建物など著作権で保護しにくい対象を意匠で守りたいという意見がある一方、アバターやキャラクターは著作権や商標で保護すべきで意匠法にはなじまないとの指摘もありました。

5:意匠の類否判断
意匠の類否判断では、用途・機能も考慮するA案(現在の類否判断基準と同様とする考え方)と、形状のみで判断するB案が議論されています。A案は現行制度と整合するが保護が限定的になり、B案は模倣防止に有効だが調査負担が大きいことが指摘されています。事務局はA案を支持する一方、3Dモデルは用途が自由に変わるためB案が適切だとする意見も多くあります。

 今後もヒアリングを続け、令和8年初めに再度議論される予定でです。

【参考】
第21回意匠制度小委員会令和7年12月15日 配布資料
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/isho_shoi/document/21-shiryou/03_shiryo-1.pdf

 

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