飯島国際商標特許事務所
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NOTE

商標審査基準改定の方向へ(令和8年4月1日施行へ)

2026-02-25

1:初めに
令和8年2月16日(月曜日)産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会第38回商標審査基準ワーキンググループが開催され、コンセント(商標法4条4項)制度採用により、おべつぃの条項に(4条1項11号、10号)に分散していた規定をコンセントの規定中に集約する旨が承諾されました。新たな審査基準は速やかに公表され、令和8年4月1日から施行されます。

https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/shohyo_wg/38-gijiyoushi.html

2:審査基準の変更の経緯
日本ではこれまで、たとえ当事者間に明確な合意(承諾)があったとしても、類似する商標の併存登録は原則として認められてきませんでした。この点は、欧米をはじめ多くの国で導入されている「コンセント(同意)制度」と大きく異なり、海外企業が日本市場へ参入する際の障壁となっていました。また、国内においても、親子会社やグループ企業、事業再編後の複数主体が同一ブランドを扱うケースが増加しており、従来の運用では実務のニーズに十分対応できない状況が続いていました。 
 こうした課題を踏まえ、今回の改正では、これまで複数の条文や審査基準に分散していた「支配関係」に関する例外規定を、商標法4条4項として一つの枠組みに統合することとされます。

3:改正の内容
⑴  支配関係(親子会社等)に関する規定の統合・変更
これまで「第4条第1項第10号」や「第11号」の基準の中には、出願人と他人の間に支配関係(親子会社、議決権の過半数保有など)がある場合の特別な取扱いが個別に規定されていま
し た。今回の改正では、このような支配関係に関する個別規定が削除され、すべて新設される「第4条第4項(コンセント制度)」の枠組みの中に集約されることになりました。
 これにより、従来は条文ごとに分散していた例外的な扱いが、より明確で一貫した制度として整理されます
⑵ 実質的な変更(第4条第4項(コンセント制度)の詳細規定の新設)
他人の登録商標と類似していても、商標権者の承諾があり、かつ出所の混同のおそれがない場合には登録を認める制度について、具体的な判断基準が新たに整備されました。
支配関係による「混同なし」の明文化
 以下のいずれかの関係がある場合には、原則として「混同を生ずるおそれがない」と取り扱うことが明記されました。
 ・引用商標権者が出願人の支配下にある場合( 親会社が出願し、先行して商標を持つ子会社が承諾する場合。)
 ・出願人が引用商標権者の支配下にある場合(子会社が出願し、親会社が持つ登録商標について承諾する場合)
 ・ 出願人と引用商標権者が同一の者の支配下(兄弟会社など)にある場合(同じ親会社を持つ子会社同士の関係)
  これにより、従来は明確でなかった兄弟会社間の扱いも、法律上の根拠をもって整理されることになります。
将来の混同防止に関する判断基準
「混同を生ずるおそれがない」と認められるためには、査定時点だけでなく、将来にわたっても混同が生じないことが求められます。
その判断材料として、当事者間で「具体的な使用態様を将来にわたって変更しない旨の合意」がある場合などが考慮されることが示されており、単なる承諾書だけでは不十分である点が明確になりました。
③ コンセント制度(第4条第4項)の適用においては、具体的な使用実態や合意内容を総合的に判断することが明確化されました。
 これにより、承諾の存在が初めて法的に意味を持つ場面が整理され、審査の透明性が高まることになります。 
 ・出願人と引用商標権者の関係性
 ・商標の使用をする商品等に係る事業の実施状況
 ・商標の使用態様その他取引の実情

4:残る問題
⑴「将来の変動」への厳格な審査
査定時だけでなく「将来にわたっても」混同のおそれがないことが求められます 。そのため、当事者間で「具体的な事情を将来にわたって変更しない旨の合意書」などの提出が必要となり、事務負担が増す可能性があります。
⑵「同一商標・同一指定商品」の原則拒絶
コンセント(承諾)があっても、完全に同一の商標を同一の商品に使用する場合は、原則として「混同のおそれが高い」と判断され、登録が認められない方針が維持されています 。最もコンセントによる救済が必要な場合である、事例で救済され難いという方針が堅持されています。
⑶ 専用使用権者等への配慮
 引用商標に専用使用権や通常使用権が設定されている場合、それらの使用権者の陳述や承諾が得られていなければ、取引の実情は考慮されません これは利害関係者が多い場合に調整が難航する要因となります。

 

 

 

 

 

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