飯島国際商標特許事務所
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インターネット上の商標の使用(越境EC対策)

2026-03-30

1:商標法の鉄則「属地主義」とその現代的解釈
商標法には「属地主義」という大原則があります。日本の商標権は日本国内で、海外の商標権は当該国内でのみ効力を持ち、互いに独立しているという考え方です。これはパリ条約に基づく国際的なルールです。しかし、インターネットの普及により、Webサイトの情報は一瞬で国境を超えます。

2:ホームページ上の商標はどの国の法律で処理されるべきか
ある国で発信された情報が他国で受信されたからといって、すべてを受信国の法律で裁くのは現実的ではありません。基本的には、「そのサイトが特定の国に向けられているか」を総合的に検討します。
具体的には、サイトがその国の言語に対応しているか、現地通貨での決済が可能か、その国への配送フォームや住所入力欄があるか、といった点が判断材料となります。
日本企業が越境ECなどを行う場合、商品名(商品商標)の登録は進んでいても、「通販サイトの名称(サイト名)」の対策は遅れがちです。特に米国のように権利保護に積極的な国では、自国の消費者が購入可能な状態であれば「米国での商標使用」とみなされるリスクがあります。アクセスの多い国については、積極的にサイト名称の商標権も取得しておくのが得策です。

3:裁判例にみる「日本国内での使用」の境界線
商標法の原則である属地主義は、インターネットの普及により新たな解釈を迫られています。現代の実務では、単に海外からアクセスできるかではなく、その情報が「どの国の需要者を標的(ターゲット)にしているか」という標的化の法理によって判断されます。
例えば、パパ・ジョンズ事件(知財高裁H17.12.20)では、米国の業者が米国サーバー内の英語サイトでピザの広告を行っていたケースにおいて、日本からも検索・閲覧は可能だが「内容はすべて英語であり、日本の需要者を対象としたものとは認められない」として、日本での商標使用が否定されました。
一方、すしざんまい事件(知財高裁R6.10.30)では、香港の業者が英語・中国語サイトで標章を使用し、原審(東京地裁)では「築地」の記述等を理由に侵害とされましたが、控訴審(知財高裁)で判断が逆転しました。
控訴審が逆転判決を下した主な理由は、当該サイトの主目的が「香港にある実店舗」の宣伝にあり、日本国内で実際にサービスを提供したり、日本市場を直接のターゲットとして営業活動を行ったりしている実態(日本語の予約フォームや日本円決済など)が認められなかった点にあります。

4 有効な対策
これらの裁判例から、単なるキーワードの存在だけでは侵害になりにくいものの、「日本語案内」「日本円決済」「日本への配送」といった実利的な仕組みを備えた瞬間に、パパ・ジョンズ事件のような非侵害の枠組みから外れ、リスクが急激に高まる可能性があります。したがって、海外EC等を行う企業は、商品名だけでなく「サイト名称(店名)」についても、アクセスの多いターゲット国で積極的に商標権を取得しておくのが最善の防衛策となります。

 

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