飯島国際商標特許事務所
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【国内制度紹介】先使用権~もう一歩前へ~

2026-04-03

1:先使用権とは何か?
先使用権とは、「他人の出願時に、既にその商標を周知させていた者」については、例外的にその後も継続して使用することを認める制度です。
実務上、他社から商標権侵害の警告を受けた際の「防御の盾」となり得るこの制度ですが、実はその盾を維持するには極めて高いハードルが存在します。

2:先使用権が認められる「3つの高い壁」
先使用権が認められるためには、以下の3つの要件を、警告を受けた側が主張・立証する必要があります。
⑴ 不正の目的がないこと
他人のブランドに便乗する意図がなく、誠実に事業を行っていることが必要です。
⑵ 出願時に「周知」となっていること
相手の出願時点で、その商標が自分の商品・サービスを表すものとして、需要者の間で広く認識されていることが更に必要になります。
この立証は、「数年前から使っている」という事実だけでは足りず、当時の広告宣伝費、売上実績、業界紙の掲載記事など、膨大な客観的証拠を積み上げる必要があり、容易ではありません。
⑶ 継続して使用していること
最後に、出願前から現在に至るまで、中断なく使用し続けていることも必要になります。

3:実務上の注意点
なお先使用権が認められた場合でも、以下のように制限を受ける可能性もあります。
⑴ 混同防止表示請求(32条2項)
先使用権が認められた場合には、登録商標と同一又は類似する商標を先使用者により並存して使用されるため、仮に権利が認められたとしても、商標権者から、「紛らわしいので、自社と他社が別物であるとはっきり分かる表示を付けろ」と請求される可能性があります。この場合、看板やパッケージに「〇〇社とは無関係」といった注釈を入れるなどの対応を余儀なくされ、ブランディングに悪影響を及ぼす可能性があります。
⑵ 範囲の限定
また使用できる範囲は、「現在使用している範囲」です。将来的に事業を拡大したり、新しい商品展開を行ったりする自由は保障されません。

4:留意点
このことも分かりますように、先使用権は、万が一の際の「命綱」にはなりますが、決して万能な権利ではありません。
また、認められたとしても混同防止表示を義務付けられるなど、ビジネス上の制約を受けるリスクが残ります。
ブランドを安全かつ自由に成長させるためには、「一日も早く出願し、登録を受けることが、最も確実でコストの低い防衛策であると言えます。

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