韓国大法院2026.2.26.宣告(個人的使用のためのリメイクに「商標の使用」を否定するとした判決)
2026-04-07
最近、韓国大法院は、バッグ修理業者が顧客の依頼によりブランドバッグを別の形状に作り替える行為について、それが顧客の「個人的使用」目的である場合、商標法上の「商標の使用」には該当せず、商標権侵害は成立しないという画期的な判決を下しました(大法院2026.2.26.宣告 2024Da311181判決)。
1:問題の所在
商標法における「商標の使用」とは、商品またはその包装に商標を表示する行為などを指しますが、その概念の本質には「商業的取引」および「市場流通」**が含まれると考えられています。本件は、ブランド品の所有者が専門業者に依頼し、当該商品を別の形状(例:バッグから財布など)へ再加工する、いわゆる「リメイク(アップサイクル)」行為において、受託業者の行為が商標権侵害(商標の使用)を構成するか否かが争われた事例です。
2:事案の概要
当事者: 原告(ルイ・ヴィトン・マルティエ)、被告(バッグ修理・製作業者)
被告の行為: 顧客から預かったルイ・ヴィトン製品を解体し、その生地などを原材料として、形状や機能の異なるバッグや財布を製作・返還しました。
3:争点
⑴ リメイク品が商標法上の「商品」に該当するか。
⑵ 受託業者の行為が「商標の使用」に該当するか。
⑶ 所有者の「個人的使用目的」が、業者の侵害成否に影響を及ぼすか。
4:下級審と大法院の論理構成
⑴ 特許法院(原審)の判断:侵害肯定説
原審は、リメイク行為を「実質的な新たな商品の生産」と捉えました。
既存の製品が完全に解体され、物理的・化学的工程を経て別個の形状となっている以上、それは単なる修理ではなく「生産」にあたります。リメイク品は独立した交換価値を持ち得る「商品」であり、そこにブランド商標が表示されている以上、出所表示機能を害すると判断しました。したがって、業者の行為は商標の使用に該当し、侵害を構成するという結論です。
(2) 大法院の判断:侵害否定説(破棄差戻し)
大法院は、商標の機能を「商業的流通」の枠組みから再定義し、原審の判断を覆しました。
① 「商標の使用」の限定解釈
商標法が保護する出所表示機能および品質保証機能は、あくまで市場における流通秩序を前提とします。専ら「個人的使用」を目的とし、商業的流通に供されない場合には、原則として商標の使用には該当しません。
② 所有権と商標権の調和(権利消尽論の投影)
商標が付された商品が適法に譲渡された後は、その商標権は消尽します。所有者がその商品をいかなる形状で使用・収益・処分するかは所有権の権能(自由)に属するものであり、リサイクルや寿命延長を目的とするリメイクもその一環といえます。
③ 代行者(業者)の地位
個人的使用のための行為が適法である以上、それを所有者自身が行うか、専門技術を持つ業者に代行させるかによって、法的な評価が分かれるべきではないとし
5:商標の使用と認められる「特別な事情」の判断基準
大法院は、個人的使用目的のリメイクについては原則として商標権侵害を否定しましたが、実態として「リメイク」の名を借りた模倣品の製造・販売が行われる可能性を考慮しました。そのため、例外的に侵害が成立し得る「特別な事情」について、以下の判断枠組みを提示しています。
具体的には、リメイク業者が単なる加工の代行者を超え、実質的にリメイク過程を主導して製品を「自らの商品」として商業的流通に提供していると評価される場合です。判断にあたっては、以下の諸要素を総合的に考慮すべきとしています。
⑴:意思決定の主体
リメイク品の目的、形状、数量などに関する最終的な意思決定権が、依頼者(所有者)ではなく業者側に帰属しているかどうか。
⑵:対価の性質
業者が受領した金銭が、純粋な労働の対価としての「加工賃(工賃)」に留まるものか、あるいは実質的な「商品代金」としての性質を帯びているか。
⑶:材料の出所および割合
リメイクに使用された材料(生地や副資材)の大部分が依頼者の持ち込みによるものか、あるいは業者が独自に調達した材料が相当程度含まれているか。
⑷:立証責任
これらの「特別な事情」が存在し、当該行為が商業的流通に該当することの立証責任は、商標権者(原告)が負うものとされました。
6:結論
本判決は、現代社会において高まりつつある「個性や好みの表現」「リサイクル」「アップサイクル」といった社会的価値や、環境的持続可能性の確保という観点を、商標法の法理に明示的に組み込んだものといえます。商標権の保護範囲を「商業的流通」の秩序維持に画定し、リメイク業者が顧客の「個人的な依頼」の範囲内に留まる限り、商標権の効力は消費者の私的領域には及ばないという明確な法理を確立しました。
【参考】
韓国 大法院
https://www.scourt.go.kr/news/NewsViewAction2.work?seqnum=1727&gubun=702&searchOption=&searchWord=





