【国内実務紹介】真正商品の並行輸入
2026-06-10
並行輸入は、市場の競争促進と消費者の選択肢拡大に寄与する手法ですが、商標権者の独占的利益との対立が常に課題となります。近年の裁判実務では、真正商品の並行輸入が商標権侵害とならない(実質的違法性を欠く)ための判断基準として、最高裁平成15年判決(フレッドペリー事件)で確立された「三要件」が不動の枠組みとして機能しています。
1:真正商品の並行輸入を判断する「三要件」
我が国の裁判実務では、以下の3要件をすべて充足する場合に限り、並行輸入が適法(侵害を構成しない)と判断されます。
① 真正商品性の要件 外国における商標権者またはその許諾を受けた者により、適法に商標が付されていること。
② 内外権利者の実質的同一性の要件 外国の商標権者と我が国の商標権者が、法律的・経済的に同一人と同視し得る関係にあること。
③ 内外品質の実質的同一性の要件 輸入された商品と我が国の商標権者が流通させる商品との間で、商標が保証する品質において実質的な差異がないこと。
2:「管理の連続性」と最新の判例傾向
かつては「真正品であれば適法」とする物理的な同一性重視の傾向がありましたが、近年の裁判実務では、商標権者の品質管理権能が流通過程に実効的に及んでいるかという「管理の連続性)」が極めて厳格に問われるようになっています。
- 近年の注目判例(知財高裁 令和3年5月19日判決): この判決は、商標権者が製造した商品を被告が輸入した事案において、フレッドペリーの三要件を適用し、当該並行輸入を「適法(実質的違法性を欠く)」と判断しました。特に第3要件(品質の同一性)について、商標権者自身が製造している商品であれば品質の保証は内包されており、流通過程で品質が劣化していない限り品質管理機能は充足されるというロジックが示されました。
- 侵害と判断された主要例:
- バーバリー事件(東京地裁平成18年): 全要件を充足せず。
- コンバース事件(知財高裁平成22年): 内外権利者の実質的同一性の欠如により侵害と判断。
近年の判例は、商標権の過度な濫用を戒めつつも、商標権者が本来有する「品質保証機能」を適正に保護する方向で、事実関係を緻密に分析するようになっています。





