【海外一般】中国『iPad事件』から再認識すべき2つのこと【2027年改正法を踏まえて】
2026-07-09
アップル社の「iPad」を使用されている方やそうでない方もこの事件に興味を持たれている方が多く、ご相談時にも度々話題になります。 この「iPad事件」は、「先願・登録主義」、「属地主義」という国際商標実務においてとても大切な考え方を再認識させられる事件であったと思います。
まず、「先願・登録主義」は、誰よりも早く出願をし、先に登録を受けた者に独占排他権である商標権を付与する考え方(制度)です。日本、中国、韓国、シンガポール、ベトナムなど多くの国は、「先願・登録主義」を採用しています。 「先願・登録主義」の重要性をいち早く理解し、アップル社が中国の企業よりも早く商標「iPad」について出願をし、商標登録を受けていれば、今回のような問題は生じませんでした。
次に、「属地主義」は、「自国の商標権の効力は他国に及ばず、他国の商標権の効力は自国に及ばず」という考え方(制度)です。 この「属地主義」も世界各国で採用されているものです。 アップル社は、商標「iPad」について中国以外の各国で商標権を保有していますが、「属地主義」の下、その効力が中国に及ぶことはありません。 「属地主義」を十分に理解し、アップル社が中国において商標権を譲り受けるなどしていれば、今回のような問題は生じませんでした。
展開を考える国で安心して事業を継続するためには、当該国で商標権を取得することは大変重要なことです。 なお、「iPad事件」は、アップル社が中国の商標権者に対して和解金約48憶円(6000万ドル)を支払うことで和解に至りました。和解によりアップル社は中国で商標「iPad」を使用できることになります。
【2027年改正商標法との関係と、今後の動向・注意点】
このiPad事件の教訓の背景にある「先願・登録主義」と「属地主義」の原則は、2027年1月1日に施行される中国の「改正商標法」においても、国際実務の絶対的な鉄則として維持されます。つまり、「進出先で自ら先手を打って権利を確保する」重要性は今後も変わりません。
一方で、新法ではこうした「名義だけの先取り」や「不使用のまま権利を抱え込んで巨額の転売金を要求する行為(商標トロール)」への取り締まりが劇的に強化されます。具体的には、出願時の「使用の意思」の義務付けや、3年間使われていない商標を当局が職権で取り消せる制度が導入されるため、今後はiPad事件のようなビジネスは通用しにくくなります。
ただし、新法下において日本企業が今後特に注意すべき点として、商標公告後の「異議申立期間」が従来の3ヶ月から2ヶ月へと短縮されることが挙げられます。悪意ある出願を早期に退けられるメリットがある反面、他社による勝手な先取りを発見した際には、これまで以上の超スピードで対抗措置(翻訳や証拠収集)を取る必要があります。
前回、そして今回お話ししたように、「先願・登録主義」、「属地主義」という概念は、過去のiPad事件の教訓だけでなく、今後の2027年新法下におけるスピード感をもった商標管理においても、常に根底にある最も大切な視点であることをご理解いただきたいと思います。





