飯島国際商標特許事務所
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【国内実務紹介】商標の類否判断の基準(最高裁)

2026-07-19

1 :初めに
商標登録を行う際、「他者の商標と似ているか(類似性)」の判断は、事業戦略における極めて重要なプロセスです。特に、複数の言葉を組み合わせた「結合商標」の場合、商標全体で比較すべきか、あるいは一部分を切り出して比較してよいのかという問題は、実務上の大きな論点となります。この類否判断の基準を厳格に定めた先例として、最高裁判所平成20年9月8日判決(平成19年(行ヒ)第255号/通称:つつみのおひなっこや事件)があります。

2:全体観察の重要性
商標の類否を判断する際、裁判所は、その外観、称呼(読み方)、観念(意味)を総合的に考察し、取引の実情を踏まえた上で「全体として」判断すべきという原則を堅持しています。これは最高裁昭和39年2月27日判決(最高裁昭和39年(行ツ)第110号)以来、確立されている法理であり、結合商標の一部だけを抜き出して他人の商標と比較する「分離観察」は、原則として許されません。

3:分離観察等が許される場合
一方で、分離観察が認められる例外的なケースについて、最高裁は本判決において、従来の最高裁昭和37年12月5日判決(最高裁昭和37年(オ)第953号)や最高裁平成5年9月10日判決(最高裁平成3年(行ツ)第103号)の法理を再確認し、以下のいずれかを満たす場合に限られるとしました。一つ目は、商標の一部分が、取引者・需要者に対し、出所識別標識として他の部分以上に強く支配的な印象を与える場合。二つ目は、それ以外の部分からは出所識別標識としての称呼や観念が生じないと認められる場合です。この条件を満たさない限り、商標の一部分のみを恣意的に取り出して比較することは法的に許されません。

4:最高裁の考え方(つつみのおひなっこや事件)
本件において、最高裁は原審が「つつみのおひなっこや」の冒頭部分のみを分離して比較した判断を誤りであると退けました。その理由は、「つつみのおひなっこや」の各文字は大きさや書体が同一で等間隔に配置されており、特定の「つつみ」のみが独立して注意を惹く構造とはいえないこと、および「おひなっこや」という後半部分も造語として自他商品を識別する機能を有しているためです。これにより、本件商標は全体として観察すべきであり、引用商標とは類似しないと結論付けました。

本判例は、商標の権利化戦略において、デザインが類否判断における法的根拠を左右する重要な要素であること、抽象的な文字比較に終始せず取引現場での認識(具体的事実)を重視すべきこと、そして権利主張の際には最高裁が示した厳格な要件が不可欠であることを示しています。

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