韓国で懲罰的賠償「原則5倍・事後減軽」へ
2026-07-27
韓国における知的財産権(特許権・商標権・デザイン保護法)侵害に対する損害賠償請求は、いま大きな転換点を迎えています。司法の保守的な運用を打破し、抑止力を徹底的に高めるための新たな法改正の動きがありました。
【懲罰的損害賠償制度の経緯】
韓国の懲罰的損害賠償制度は、導入以来、段階的に強化の一途をたどってきました。
導入期にあたる2019年から2020年にかけては、特許法(2019年7月施行)、商標法・デザイン保護法(2020年10月施行)において、損害額の「3倍まで」としてスタートしました。その後、法改正により強化期が訪れ、特許法は2024年8月、商標法・デザイン保護法は2025年7月から、それぞれ「5倍まで」に引き上げられました。
しかし、「最大5倍」に引き上げられたにもかかわらず、2026年6月23日には商標法・デザイン保護法・特許法などのさらなる改正案が議員立法として発議されました。
【議員立法に至る背景】
その背景には、韓国の司法運用に対する強い危機感があります。実損害賠償制度に慣れ親しんだ韓国の裁判所は、倍率が引き上げられた後も一般の損害賠償と同様の感覚で賠償額を抑え込む傾向が続いていました。従来の「最大〇倍まで」という規定では裁判所の裁量によって賠償額が低く抑えられがちでした。
この状況を打破しペナルティの確実性を強制的に高めるため、今回の改正案では「原則として一律5倍」をベースラインに設定し、酌量すべき事情がある場合にのみ裁判所が「後から減軽する」仕組みへとする議員立法が発議されるに至りました。
近年、裁判所における懲罰的賠償の認定件数は増加傾向にあり、特に「いつの時点で故意があったとみなされるか」が厳格に判断されています。
具体例として、2024年9月の菓子ブランド事件では登録商標無効後の継続使用に故意性を認めて2倍を含む合計6億ウォンが認定されたほか、同年11月の収納ボックス事件ではデザイン権侵害に関し損害額の3倍である3億ウォンが認定されました。さらに、2025年8月の歯科医院事件では警告受領前であっても不使用取消審判請求日を起点に故意性を認めて1.5倍が認定され、同年9月の権利移転後の継続使用事件では移転後も使用した元権利者に3倍、警告を受けた流通業者に2倍が認定されました。直近の2026年1月における歯磨き粉ブランド事件でも、類似商標の不正使用による誤認混同につき、警告受領日からの故意性を認めて2倍が認定されています。
今後、「原則5倍・事後的減軽システム」を前提とした法改正の動向から目が離せない状況になりつつあります。
韓国市場で事業・営業活動を行う企業にとっては、他人の知財権に抵触しないための慎重な事前クリアランス調査を怠らないこと、そして警告状受領時に迅速かつ適切な初期対応を行うことが不可欠です。





