海外:意匠法
韓国でデザイン保護法の改正案の代案が提出されました
2025-05-13
第424回国会(臨時会)第2次産業通商資源特許小委員会(2025.4.16.)では、昨年度提出された法律改正案2件を本会議に付議することなく、その内容を統合・調整して当委員会の代案を作成することとされました。
その主な内容は以下の通りです。
1:一部審査の見直し
韓国のデザイン保護法では、我が国同様全ての登録要件を審査した後に登録を認めることを原則とします。但し、流行性の激しい物品分野(衣服、繊維製品、文房具、事務用品など一部限定された物品)については、
①デザイン登録出願に必要な方式を備えているか
② 公序良俗に違反するか
③ 工業上の利用可能性を有するか
④ 国内または国外に広く知られた形状、模様、色彩またはこれらの結合により容易に創作できるデザインであるか
⑤ 主体的要件その他条約違反の有無などの形式的要件し、新規性喪失如何に対しては審査しないことで、迅速に登録が可能とする一部審査登録制度を設けています。
この結果、通常の意匠登録出願の審査(10~12月程度審査期間に要する)ものとは異なり、早急に権利付与(約4~6月程度)がなされますが、近時この制度を悪用し、既に公知・公用になったデザイン権をあたかも新しいものであるかのように登録してオンライン上で物品を独占して販売する事例が相次いでいました。
このため、デザイン一部審査登録出願について、新規性と先願の要件に明確に違反している場合には、審査官が拒絶査定とするよう根拠となる規定を設けるとともに、第三者の権利保護のためにデザイン一部審査登録に対する異議申立期間を延長することで、より実効性のあるデザイン一部審査制度を改正することが必要となります。
【改正内容】
1:拒絶理由の強化
デザイン一部審査登録出願が、新規性違反、先願違反については、デザイン登録拒絶査定をすることになります。
2:異議申立期間の長期化
現在の設定登録日から登録公告日後3月以内を、デザイン権侵害に関する通知を受けた場合は、その通知を受け取った日から3月になる日まで異議申立を申請でき、登録公告日から1年が経過すれば異議申立が申請できなくなります。
3:移転請求権
韓国デザイン保護法は、特許法とは異なり、冒認権利者に対する移転請求権が認められていません。そのため正当な権利者は登録無効審判を提起して裁判所による判決を受けてから当該のデザイン権に対し再出願をしなければならず、時間と費用を要しています。
そのため、正当な権利者がより効率的にデザイン権を行使できるよう制度を見直す必要があるとの指摘が提起されていました。
そのため、デザイン保護法でも移転請求権を認めるともに(我が国の意匠法26条の2に相当)、移転登録された場合には無効審判を封じることができるように、当初から移転登録を受けた者に帰属していたものとみなされると共に、善意の原デザイン権者や実施権者等には法定通常実施権を認めることとされます。