NOTE

商標・意匠・知財に関するコラム

  • 2023-02-01

     平成26年改正により新しいタイプの商標の制度が導入されました。このうち色彩のみからなる商標の登録例は、

    2月1日現在のJ‐PLATPATの検索によっても僅か9件にすぎません。

    なお、色彩のみかなる商標には、「単色」、「色彩の組み合わせ」がありますが現在、色彩の組合せの登録例はあ

    りますが、「単色」の登録例はありません。

    単色の商標について知財高裁が令和5年1月24日に判決を下しましたので、今後の参考までに事案の概要等につい

    て掲載致します。(令和4(行ケ)10062 )。

    ◆ 単色の商標について争点となった事件として(令和1年(行)ケ10119号 不動産ポータブルサイト事件:商

     願2015‐30535号、不服2018‐3370号)、(令和1年(行ケ)10147事件 油圧ショベル事件:商願2015‐300

     00号、不服2017‐2496)があります。

     

    1 事件の概要

      本件で問題となった商標は三菱鉛筆の「単色」に係る商標で、指定商品を第16類「鉛筆、シャープペンシル、

       シャープペンシルの替え芯、鉛筆削り(電気式のものを除く。)」と指定しております。審査で拒絶査定を受け

      たので、拒絶査定不服審判の請求を受けました。そこで、拒絶査定不服審判を請求したのですが、審判では以下

     のように審決がなされました。

     

    2 審決の内容

      ⑴ 3条1項3項該当性

        商取引においては、商品やその包装の色彩は、商品のイメージ美感を高めるために多様な色彩が選択されている

      から、本来的には商品の出所を表示する機能を有するものではなく筆記用具を取り扱う業界でも多様な色彩が採択

      されている。その需要者及び取引者は、単に商品やその包装の美感を向上させる目的の色彩であると認識、理解

      るにとどまり、商品の特徴を普通に用いられる方法で表示されているにすぎず、3条1項3号に該当する。

      ⑵ 3条2項

        また請求人は当該色彩を基調とした「ユニ」、「ユニシリーズ」を1958年発売いらい販売して有名になっている。

       しかし原告商品の外装は、本願商標に係る色彩を基調色としつつも、他の色彩(黒色、金色)や文字(「MITSU-B

      ISHI」、「Hi-uni」、「uni」等)を表示してなるから、本願商標に係る単一の色彩のみで商品の出所を表示してな

      るもではない。本件アンケート調査によっても、比較的鉛筆に親しんでいる需要者の間においても、本願商標から

      、原告との関連を想起できる者は50%にも満たず、半数以上の需要者は原告との関連を想起できておらず、本願商

      標の指定商品に係る一般の消費者(鉛筆の使用頻度が低い者を含む。)の間における認知度は、それより低いものと

      考えられる。

          そうすると、本願商標に係る色彩は、その指定商品に係る需要者の間において、原告に係る出所識別標識として広

      く認識されるに至っているとまでは認められない。

      として請求棄却審決がなされました。これに対し、争ったのが本件訴訟ということになります。

     

    3 訴訟での判断

      訴訟では以下のように判断がなされました。

      ⑴ 3条1項3号について

       商取引においては、商品の外装等の商品又は役務に関して付される色彩は、商品又は役務のイメージ、美感等を高

      めるために多種多様なものの中から選択されて付されるものにすぎないから、そのようにして付された色彩が直ちに

      商品又は役務の出所を表示する機能を有するというものではない。そうすると、本願商標は、本件指定商品である鉛

      筆の特徴(鉛筆の外装や色等の色彩)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるということが

      できるから、本願商標は、商標法3条1項3号に掲げる商標に該当する。

     ⑵ 3条2項について

       原告商品は、相当の長きにわたり新聞等の記事において取り上げられ、また、様々な媒体において広告がされてき

      たのであるから、原告商品(ユニ、ハイユニ又はユニスターと称する鉛筆)は、需用者の間において、相当程度の認

      知度を有しているものと認められる。~(略)~原告商品には、本願商標のみならず他の色彩及び文字も付されてい

      るところ、~(略)~原告商品に触れた需用者は、本願商標のみから当該原告商品が原告の業務に係るものであるこ

      とを認識するのではなく、本願商標と組み合わされた黒色又は黒色及び金色や、当該原告商品が三菱鉛筆のユニシリ

      ーズであることを端的に示す「MITSU-BISHI」、「uni」、「Hi-uni」、「uni☆star」

      等の金色様の文字と併せて、当該原告商品が原告の業務にかかるものと認識すると認めるのが相当である。

      鉛筆の市場においては、原告及び株式会社トンボ鉛筆が合計で80%を超える市場占有率を有しており、比較的鉛筆

      に親しんでいる需用者としては、本件アンケート調査における質問をされた場合、回答の選択の幅は比較的狭いと考え

      られるにもかかわらず、本願商標のみを見てどのような鉛筆のブランドを思い浮かべたかとの質問に対し、原告の名称

      やそのブランド名(三菱鉛筆、uni等)を想起して回答した者が全体の半分にも満たなかった。

       以上によると、本件指定商品に係る需用者の間において、単一の色彩のみからなる本願商標のみをもって、これを原

      告に係る出所識別標識として認識するに至っていると認めることはできない。

     

    ◆ これによると単色の商標はまだまだ登録が難しいということが出来ます。また鉛筆という寡占に近い業種の中で色彩の

      みを見た需要者の反応が低かったことも影響があったものと考えれれます。寡占状態でない業種で半数以下ということ

      がどのように判断されるかは今後の問題と思われます。なお隣の韓国では3条2項に相当する規定の認識のレベルが我が

      国から比べて低いので(周知・著名までは要求されず、特定人のものと認識することで足りる(韓国商標法33条7項2号)

      色彩のみの商標が登録し易いと考えられます。

     

     

  • 2023-01-23

    メタバース関係の法案が国会に提出されたと新聞やネット上で報道がされていますが、具体的にはどの法律により保護がなされるよう

    になるのでしょうか?

     メタバース関係において今回改正の対象とされる法律は不正競争防止法2条1項3号(形態模倣行為)に関する事項です。

     もともと不正競争防止法は商品形態の模倣(いわゆるデットコピー)によって、安価な模倣商品が流通に流れることは、商品形態の開

    発者等の利益を害することになることから、平成5年の改正で不正競争防止法に規定されました。また不正競争に該当した場合には差止

    (3条)、損害賠償(4条)、刑事罰の適用(21条2項3号)がなされることになります。

    なお現行の不正競争防止法の規定は以下の通り※1ですが、商品形態の商品は有体物のみを指すか無体物までも含めるか明記されていま

    せん。

    そのため、デジタル商品の形態模倣に対応できるか不明確でした。そのため、今改正においては不正競争逐条解説中に、「商品」に無体

    物が含まれるとの解釈を明確化することにされます。また立法時には「商品の形態」は有体物の商品に限定すると考えられていたため、

    ネットワーク上の取引行為を意味する「電気通信回線を通じて提供する行為」を規定していませんでしたが、デジタル商品の取り引きにも

    適用できるように法上に新たに規定しています。

     なお、不正競争防止法2条1項3号の対象は、意匠や著作物のような創作物である必要も、周知性も必要としませんので簡単に不正競争に該

    当し差止請求等を受ける可能性があります。

    また、商品形態の開発者が差止等を求める場合には、相手方が当該形態に依拠していることを(模倣をしていること)を立証することが必要

    です。更に権利行使期間は国内販売から3年と短い点(19条1項5号イ)にも留意が必要です。※2

     

    ※1

    【不正競争防止法2条1項3号】

     他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

     ※2

     国内販売から3年は、①「展示会等宣伝活動の開始時」から3年、②実販売から3年とういう見解に分かれていますが、保護期間の伸長を図る

    観点より、実販売から3年とする旨が法律改正ではなく、不正競争防止法逐条解説に明記される予定です。

  • 2023-01-12

    1 初めに

      他人の先願・先登録の商標と同一又は類似する商標の出願に対しては、4条1項11号の拒絶理由が通知されます。この拒絶理由を解消す

     るためには、①出願人は引例商標と出願商標と非類似である主張、②指定商品や指定役務の削除補正、③引例が不使用であるような場合

     には不使用取消審判を請求し、引例を消滅させることの他に、④引用商標権者に拒絶理由が通知された出願の出願人の名義を変更し4条1項

     11号の拒絶理由を解消した後に当該出願の名義を再度元の出願人に変更してもらう(登録前のアサインバック)等により拒絶理由を解消し

     商標権を取得することが出来ます。

     2 アサインバックの問題点

     ⑴ 登録前アサインバック

       第4条第1項第11号に係る拒絶理由の解消を目的とした、設定登録前の名義変更の往復行為は、引用登録商標の権利者に商標登録出願

      により生じた権利を譲渡し、設定登録になった後に商標権の譲渡を得る(移転登録手続きによるもの)アサインバックの類型から見ると、

      安価で済むことから、ユーザーに多用されてきた実情があります。

       しかし、このような手続きで事後的に出所混同が生じた場合には、商標権の譲渡がなされていないことから混同防止表示請求(24条の

      4)や、取消審判(52条の2)を利用することができません。

     ⑵ 登録後のサインバック

       他方、引用商標権者の元で商標権の並存登録を認めた後の移転に、権利の一時的な移転に伴うリスクや、金銭的・手続的負担があります。

      そのため、中小企業を含むユーザーからは、より簡便・低廉なコンセント制度の導入を望む声があります。なお、コンセント制度には、同

      意を行うだけで登録となる完全型コンセントと、同意後審査官が出所混同の有無を判断し出所混同の虞がなければ登録を行う留保型コンセ

      ントがありますが、日本で採用しようとしているコンセントは留保型コンセントです。

     3 日本型コンセント(今回のコンセント制度)

       コンセント制度を採用するに際して需要者の利益を守る必要があることから、事後的に出所混同が生じた場合に、混同防止表示請求(24

      条の4)や取消審判(52条の2)のような制度の導入も加味して新たなコンセントの枠組みが検討されています。

        参考:産業構造審議会知的財産分科会 第10回商標制度小委員会令和4年11月22日

       https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyokouzou/shousai/shohyo_shoi/document/t_mark_paper10new/02.pdf  

  • 2023-01-11

    1 初めに

      自己の氏名は商標登録出来ないのでしょうか?

      自己の氏名の登録の有無については商標法4条1項8号の規定があります。この規定について産業構造審議会知的財産分

     科会商標制度小委員会(平成4年12月23日(案)で検討されておりますので、その概要についてお知らせ致します。

     

    2 4条1項8号(本規定)の趣旨

      この規定は、人格権の保護という趣旨から規定されたものされています(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第 22

      版〕1553 頁)。

      そのため、当該他人の承諾を得た場合には、当該他人の人格権が害される虞がないことから商標登録を受けることが出来る

     (4条1項8項括弧書き)とされています。

       では自己の氏名であっても他人の氏名と同一又は類似する商標については、自己の氏名を有する他人全てに承諾を得なけ

      れば商標登録を受けることが出来ないのでしょうか。

     

    3 考え方

      これついては厳格に考える立場と、緩和して考える立場があります。なお裁判例や特許庁の審査・審判の実務では全員の承

      諾を得ることが必要であるという厳格な基準が適用されています。

     ⑴ 全ての者の承諾が必要(厳格説)

     【理由】

      ① 本号の趣旨が人格権の保護にあることから、全ての者の承諾が必要である。

      ② 出所混同の趣旨ではないことから、商標の周知性や著名性を考慮する必要はない。

     ⑵ 一定の周知性等ある者の承諾が必要(緩和説)

     【理由】

      ① 全員の承諾を取るのは現実的ではない。

      ② 全ての者の承諾が必要だとした場合には、自己の氏名を商標登録し、ブランドとして展開ができない。

     

    3 現在の実務の問題点

      現在の実務では、自己の氏名でも商標の構成中に「他人の氏名」を含む場合、当該他人の承諾がない限り拒絶されることに

      なります。そのため、創業者やデザイナー等の氏名をブランド名に用いることの多いファッション業界等では緩和して欲し

         い旨の要望がありました。またそのような商標を選択する者の多くは中手企業であり、中小企業のスタートアップのブランド

         保護の観点からも本規定の整備が要望されています。さらに国際的にみた場合、氏名の周知性を要件とする国が多く存します。

      また音商標の「マツモトキヨシ事件」知財高判令和 3 年 8 月 30 日(令和 2 年(行ケ)第 10126 号)では、①自らの承諾

         なしにその氏名、名称等を商標に使われることがないという人格的利益の保護に加え、②出願人の商標登録を受ける利益との

         調整を図るものとされています。

      これらのことから、本規定については以下のように整備を行うことが検討されています。

     

    4 本規定の検討

     ⑴ 一定の知名度 

       本規定の趣旨が人格権の保護だけではなく、商標登録出願人が商標登録を受けることができないこととの利益調整にもある

           ならば、他人の氏名に一定の 知名度を加味して判断することも可能だといえます。なおこの知名度のレベルをどうするか等

           は今後更に検討を行うとされています。

     ⑵ 一定の知名度がない場合(濫用的な出願)

        一定の地名度を要件とした場合、知名度がない氏名を無関係な者によって出願された場合、その他人に商標権が付与される

       ということがあり得ます(濫用的な出願)。  

       この場合、商標の使用意思(3条1項柱書)や、公序良俗違反(4条1項7号)で拒絶をすることが考えられます。

       しかし全てがこれらで処理ができるわけでもなく、8号の趣旨が「出願人の商標登録を受ける利益と他人の氏名に係る人格的利

       益との調整」のもあると考えた場合、出願人側の事情(例えば、出願することに正当な理由があるか等)を考慮する要件を課す

            ことが適当であると考えらます。

     ⑶ 名称について

       名称については氏名のような問題がないので、従来通りとされています。

     

       このような検討が産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会(平成4年12月23日案)で示され、今後更に検討がなされ、

            氏名について商標登録の実務も変わっていく可能性があります。今後の動向に関して明確になった次第再度、お知らせを致した

           いと思います。

     

       参照:令和 4 年 12 月 23 日産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会

          商標を活用したブランド戦略展開に向けた商標制度の見直しについて(案)

         https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/shohyo_shoi/t_mark_paper11new.html

     

     

  • 2023-01-10

    著作権の改正審議内容(令和4年12月提出案)

    【著作物の承諾等取り難いための新たな制度の新設】

      現在、著作権法の改正が審議されています。今回は、その中で承諾が難しい場合の新たな制度及び損害賠償請

     求制度の見直しについて審議会での検討内容について紹介致します。

    1 二次的利用を図るための新たな制度

      著作権者が不明や、著作権者に許諾を求めたが長期間応答がない場合には、二次的著作物を利用した場合には

     著作権侵害が問われてしまいます。この場合には裁定制度(67条、67条の2)がありますが、裁定制度は公益的

     観点から認められるものですが、新制度は著作権者の意思を尊重する制度です。

      また、当該著作物の利用期間も、文化庁長官が利用を認める旨の決定を行った後から、著作権者の申し出がある

     までの間(時限的な期間しか利用が出来ません)です。

      時限的な期間を超えて利用したい場合には裁定制度を利用することができます。

     本制度の時限的利用が認められるためには以下の要件を具備する必要があります。

    【要件】

     ⑴ 集中管理されている著作物ではないこと

       ∵ 今回の新制度、利用許諾に関する権利処理のコストが高く、 著作物の利用が難しいことから創設され

        た規定です。従って、権利行使しやすい集中管理されている著作物は新制度の対象とはなりません。

     ⑵ 利用の可否や条件等が明示されている著作物ではないこと(オプトアウトが示されている著作物の場合も対

      象とはならない)

       ∵ 著作物利用の条件や利用禁止等の利用の可否が明示されている著作物、あらかじめ拒絶の「意思」を示し

        ている著作物も利用が難しということでありませんので、新制度の対象外とされています。

     ⑶ 著作権者等に係る情報がない(連絡不能)の著作物又は連絡可能な著作物であり、連絡を試みたが長期間にわ

      たり応答がない著作物であること

       ⑷ 著作権者等の利益を不当に害したり、著作者の意向に反するといったことが明らかであると認められないこと

       ⑸ 使用料相当額に当たる利用料を支払うこと

    【効果】

    利用期間の上限内、かつ、著作権者等からの申出があるまでの間の時限的な利用が可能になります。

     

    2 損害賠償請求規定の一部改正

     ⑴ 背景

       近時、著作権侵害が非常に多く海賊版サイトによる被害が深刻になっており、特にマンガに関する海賊版被害

      については、新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、海賊版サイトへのアクセスが急速に拡大していま

      す。その一方、違法サイトによる損害の額は実販売能力を超えてる金額を大幅に超えるものがあります。

       この場合、現行114条1項では販売数量を超え部分に対しライセンス相当の額を損害賠償として加算できるか
      否か、産業財産権法(特許法102条1項、商標法38条1項等)のように明確化されたものではありません。

       更に、114条3項では最低限、ライセンス料相当額は損害賠償が出来る旨規定がされていますが、侵害時のラ

      イセンス料は、契約時のライセンス料よりも高額となる場合が多いのですが、その点を踏まえた規定ぶりとなっ

      ていません。なお、産業財産権法では令和元年の改正により、その点が明確化されています。

     ⑵ 改正案

       令和元年の特許法等の一部改正で規定されたように、販売数量を超えた損害に対してもライセンス料相当額を

      加算できる旨を明確化するように提言がなされています。

        ライセンス料相当額についても産業財産権法と著作権法との間で何ら異なることはないと考えられることか

      ら、同様の規定ぶりにすべきとの提言がなされています。

       なお、懲罰的な損害賠償の請求は、民法の不法行為の枠を超えるものであり

       また、114条3項ではライセンス料相当額は最低限の損害の額として請求が出来る旨規定されていますが、早急

      に改正すべきではなく今後の課題とすべき旨が併せて提言されています。

     

    【文化庁 ホームページ(文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第8回))】

    https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoseido/r04_08/

  • 2022-09-27

     コロナ禍の影響もあり、仮想空間メタ―バースの中で、自身がアバターという仮想の人物となり、空想の世界を疑似体験するということが話題になっています。

     

     このメタ―バースの世界では、様々な知的財産権が問題となりますが、商標についても、今までとは異なる視点で権利の取得を行う必要があると思われます。

     メタバース内では、アバターを装う仮想商品(NFT化された仮想靴、仮想被服等)が高値で販売されることが生じます。そして第三者が、有名なブランドを模したものを、仮想商品に付して販売がなされる場合があります。

     この場合、現在取得している商品についての商標権(指定商品:靴・被服等)に基づき、NFT化された商品についての商標権の侵害を求めることができるのでしょうか?

     靴や被服等の既存の商品と、仮想商品との間に類似関係があるのでしょうか?

    また、混同が生じるということがあるのでしょうか。

     

     仮想商品の場合、コンピュータープログラムの分野(第9類)等で出願を行うことになりますが、靴とコンピュータープログラムでは、現時点で類似関係はありません。また混同が生じる余地もないかと思われます。

     但し、指定商品を「仮想商品(仮想靴)作成用のプログラム)」等とした場合は、靴等との関係で混同の可能性があるかはどうでしょうか。なかなか難しい問題です。

     なお、日本の法制では混同が生じなくても、著名であれば不正競争防止法2条1項2号で差止や損害賠償請求を行うことができます。

    但しそれは、あくまでも著名性がある場合に限ってということになります。

     

     米国では「エルメス」が有名な鞄「BERKIN」を仮想商品(NFT化された商品)として販売している(MetaBirkins)の使用に対し、商標権の侵害を問う裁判が提起されています。

     裁判所の最終判断は示されていませんが、今後このような紛争が生じることが想定されます。

     

     模倣を防止するためには、仮想商品や役務分野に積極的に仮想商品等の記載を指定商品・役務について記載し、商標登録出願を行うことが必要だと思われます。

     またメタバースの世界は世界各国に通じ、各国でメタバース内の疑似体験や、仮想商品等の販売や購入等を行うことができます。

     商標権は属地主義ですので、本来は世界各国に想定される仮想商品が想定される区分につき出願し、権利取得を図ることが必要になります。ただこの辺りは、法の解釈が今後どうなるか議論があるところです。

     そこで先ずは、自国に出願し、先願の地位を取得し、今後の動向を踏まえ自国の出願を基礎として、各国で権利取得を行うことが重要だと思われます。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

  • 2022-01-11

    1 主登録・補助登録とは
          米国登録には主登録簿への登録(主登録)と補助登録簿への登録(補助登録)があります。
        主登録簿への登録は自他商品等識別力がなければなりません。
          補助登録は、記述的であるとされる語など自他商品・役務識別力が欠如するものの、「使用
       による識別性」を獲得できる可能性があるものを登録するために活用されます。

    2 補助登録の効果
           補助登録簿への登録の意場合でも以下の効果があります。 
       ① 連邦裁判所での侵害訴訟(39条)の提起が出来る。
       ② 登録商標である旨の表示(®)の使用(29条)。
       ③ 後願商標に対する引例となる(2条(d))。
       ④ 本国登録(パリ優先権主張)に基づく出願(44(d)(e) )ができる。
       ⑤ マドプロ出願の基礎出願とすることができる。

    3 補助登録の劣る点
         これに対し補助登録は主登録に認められる、
       ①税関における水際対策ができない。
       ②登録を受けた商標について、商標権者がアメリカにおいて最初に商標権を取得したもので
        あるという推定、
       ③商標権の存在がアメリカ全域に通知されたとする擬制、
       ➃登録から5年経過した場合の登録の有効性を争えなくなる効果(不可争性)はありません。
          補助登録をがなされた商標は自他商品等識別力がないわけですが、使用によって自他商品
        等識別力が生じる場合があります。
           また識別性の判断も時代に応じて変動します。

         補助登録を行い識別力が生じた場合に、再度出願を行った場合には、本登録を受けやすくな
       るという効果があります。   

     

     

     

     

     

     


       

     

     

  • 2021-12-17

    1 使用主義の米国では
    使用主義の米国では、商標権は使用によって発生するものです。登録がなくても使用している地域では独占排他権が生じます。
    商標権独占権の範囲を全米に広げるためには、連邦登録をすることが必要になります。
    そしてその連邦登録をする際には、米国では出願形態を特定して申請する必要があります。
    現在4タイプの出願形態があります。

    2 5タイプの出願形態
    ⑴ 使用に基づく出願
    ⑵ 使用意思に基づく出願
    ⑶ 本国登録に基づく出願
    ⑷ 本国出願に基づく出願
    ⑸ マドリッドプロトコルに基づく出願(本国に基礎出願や基礎登録が必要です)
    このうち、⑶⑷はパリ6条の5からの要請であり、⑸はマドリッド協定書上の要請です。
    米国で実際に使用がされてなくても登録ができるという点では、使用主義国である米国において登録になるというメリットがあります。
    ただし、5~6年目の1年の間に使用証拠をしなければなりません。
    また、登録から9~10年の間に使用証拠の提出が必要になります。

    【図表】

     

    出願時の使用証明

     5~6年目の使用証明

     9~10年目の使用証明

    実際の使用が基礎

    使用の意思が基礎


    登録許可通知から
    6月以内に必要

    最大3年まで延長可能

    本国登録・出願が基礎

    ×

    マドプロ出願 MM18

  • 2021-12-10

    1 米国は使用主義
    米国は使用主義の国です。そのため登録をしなくても使用をすればその地域内で商標は発生します。
    これをコモンロー上の商標といいます。
    ただこの独占権は現実に使用している地域内にしか及びません。
    そのため、米国でブランドビジネスを展開にするためには、必ず登録を受けておくことが必要になります。
    では米国で商標登録をする意義はどこにあるのでしょうか。

    2 米国登録制度
    米国では州による登録と連邦登録とに分かれます、州登録は州内での独占排他権です。
    米国全土に対して独占権は及びません。米国全土に独占権が生じるためには連邦登録を受けておくことが必要です。
    また連邦登録により、以下の効果も生じます。

    3 連邦登録の効果
    連邦登録を行うことで、主に以下の効果が生じます。
    ⑴ 排他的権利の推定
    登録者がその商標を使用する排他的権利を取得したと推定されます。
    ⑵ 使用擬制
    商標を商標を一定の地域でしか使用していなくても、出願日からアメリカ全域において商標を使用していたものと擬制されます。
    ⑶ 擬制告知
    登録により、商標権をアメリカ全域に告知したものと擬制されます。その後に第三者が同じ(又は類似の)商標を使用した場合、その第三者は登録商標の存在を知らなかったという言い訳(善意の抗弁)ができなくなります。
    ⑷ 模倣品(侵害品)の差止め
    連邦登録商標を税関に申請しておくと、模倣品の輸入を水際で差し止めることができます。
    ⑸ Rマーク
    連邦登録商標であることを証明するRマークを商標に付けることができます。
    ⑹ 不可争性の取得
    商標登録後、継続的に5年間商標を使用して、アメリカ商標法第15条の宣誓書を提出すれば、不可争性を取得します。すなわち、第三者は登録の有効性について争えなくなります。
    このように連邦登録することで、商標権の効力が増すことになりますので、米国に商品展開をする場合には連邦登録されることがブランド戦略上は必要です。

  • 2021-12-03

    1 はじめに
    今後、海外法制について様々な情報を掲載していこうと思います。
    ただ、各国法制をいきなり頭に入れるよりも条約の位置づけを抑え、その条約から各国国内法制を考えてみると理解しやすいということがあります。
    ここでは各国が締結している条約から、各国の法制がどのようになっているかを考えていこうと思います。

    2 条約と国内法の関係
    憲法学上、条約は国内法制とは別の体系にあるとする考え方(二元論といいます)、国内法制のどこかに含まれるとする考え方(一言論といいます)に分かれます。
    ここでの議論は憲法学の議論になりますので、多くは触れず、我が国 の通説である一元論を前提に説明します。
    またこの一元論に立った場合でも、条約は憲法より上という考え方(条約優位説)、憲法より下(憲法優位説)との立場の違いがあります。
    ただ条約のほうが国内法(特許法、商標法)よりも上であるという考え方を多くの国はとっています。
    したがって、国内法の商標を理解し且つ国際条約の理解が図れれば、各国の商標法制について大まかに理解ができると思います。
    条約との関係を踏まえて各国の商標法制を理解した方がスムーズな場合もあります。
    特にパリ条約やTrips協定は各国内の実体要件を定めるものですので、条約を通じて各国法をみていくことができます。
    またの機会に、各国の商標法が条約の関係でどのようになっているか説明したいと考えております。

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